他の人の曲も、自分の仕事の履歴になる
一つの曲を、誰のどんな仕事として捉えるか。ザ・シューズ(The Shoes)の「Stay the Same」は、原曲のアルバムで紹介されるときと、エティエンヌ・ド・クレシー(Etienne de Crécy)のリミックス作品として並ぶときで、見るべき人の役割が増える。
歌う人と、作り替える人
DIYのシモーン・スコット・ウォーレンは、『Crack My Bones』の冒頭曲「Stay the Same」を、エッサー(Esser)が歌う、週末のサウンドトラックになりそうな曲と評している。1 原曲を知る一つの手掛かりは、歌い手と、その歌を収めたアルバムにある。
リミックスを掲載するQobuzでは、ド・クレシーがRemixerとMixingEngineerの両方に記される。2 リミックスは既存の曲を組み替えて別の版にする仕事、ミックスは複数の音のバランスや配置を整える仕事である。ここでは、作り替える担当と、その音をまとめる担当が同じ人へ結び付く。
土曜の夜へ向けた、回顧盤の並べ方
この版は、ド・クレシーの『My Contribution to the Global Warming』に掲載されている。2 Resident Advisorの発表記事で、本人はキャリアの各段階を代表する曲を集めたと話し、二十年にわたり、とりわけ土曜の夜にこの惑星を熱くしようとしてきた、と自分の仕事を説明した。3
回顧盤にリミックスが入ることで、他の人の曲に関わった仕事も、本人のキャリアを示す作品として並ぶ。原曲へ戻れば歌い手とバンドのアルバムが見え、回顧盤へ戻れば、一人の作り手が別々の音楽へ関わってきた履歴が見える。
代表作を並べるという行為には、どの曲を選ぶかに加えて、自分の仕事をどう受け取ってほしいかという説明も含まれる。土曜の夜へ向けた本人の言葉は、その作品集を、年表として読むだけでなく、踊る時間へ音楽を渡してきた仕事として考える手掛かりになる。
出典・注
[1] Simone Scott Warren, DIY「The Shoes — Crack My Bones」。原曲のアルバム評で、リミックスの音や歌唱クレジットへそのまま移さない。
[2] Qobuz『My Contribution to the Global Warming』。掲載リミックスの曲別役割。加工箇所や具体的な作業工程、追加した版との録音同一性は未確認。
[3] Will Lynch, Resident Advisor「Etienne de Crecy preps five-disc retrospective」(2012年2月29日)。回顧盤についての本人発言で、個別リミックスの制作目的や、実際のDJ使用の証明ではない。