刻んだ素材を、一曲の時間で確かめる
録音を細かく加工する仕事と、曲を最後まで通して確かめる仕事では、扱う時間の長さが違う。エデン・バーンズ(Eden Burns)とクリストファー・タブス(Christopher Tubbs)の「ON&ON」をめぐる本人談と曲評からは、小さな音の選択を、長い流れの中で判断するという制作の視点が見えてくる。
フルートを、録音素材として扱う
Newzicianでバーンズは、ネイサン・ヘインズ(Nathan Haines)が録音したフルートの一部を逆向きにし、それを刻んだと説明している。記事は「ON&ON」の二つのミックスを一緒に扱っている。1 笛の演奏を録音する仕事に、その録音を区切り、再生方向を変える仕事が加わる。
素材を細かく扱えることは、選択肢が増えることでもある。どこで区切るかと、どちら向きに再生するかは別の選択だ。区間の順番を逆にすることと、音を逆再生することの違いは、サンプリングのガイドで説明する。本人の短い加工説明から、実際の切断位置までは分からない。
通して聴くときの、時間の感覚
Test Pressingのマーティン・ペペレルは、Original Mixについて、ハウスのテンポのグルーヴが重なり、積み上がっていくと評する。そしてベースが現れると、その登場までの時間に納得できるように感じると書いている。2 グルーヴは、リズムの組み合わせが生む動きの感覚だ。この評は、音の種類だけでなく、いつ出てくるかを曲の価値として捉えている。
バーンズ自身も、タブスと曲を通して聴き、時間が早く過ぎるなら良い兆候、長く感じるなら良くない兆候かもしれないと話す。1 加工した一部分を気に入ることから、一曲を聴く時間の感覚へ、判断の単位を広げる方法である。
細かい操作ができるほど、一部分だけを直し続けることもできる。曲を通すという行為は、その部分が全体のどこに置かれているかを確かめる機会になる。素材をどう作ったかに加えて、その音を待つ時間まで考えると、完成した曲について尋ねることが一つ増える。
出典・注
[1] Newzician「Twominds Preview: Burns and Tubbs」(Issue 3、2024年)。フルート加工は二つのミックスを扱う文脈のバーンズ本人談で、Originalだけの工程とは特定しない。通して聴く判断も本人の説明で、実測時間や完成版の編集箇所を示すものではない。
[2] Martyn Pepperell, Test Pressing「Burns & Tubbs Vol.III」(2024年3月2日)。Original Mix固有の曲評を採用。同記事のBullet Train Mixの評は移さない。