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2024年8月1日 追加

Step On - 2007 Remaster

ハッピー・マンデーズ / Pills 'N' Thrills And Bellyaches (Collector's Edition) ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 2 分

演奏の癖を、曲の強みにする

ハッピー・マンデーズの「Step On」で、ベースはキックの少し後ろにいる。1990年の録音を振り返ったプロデューサー、スティーヴ・オズボーンは、ポール・ライダーのその弾き方を気に入っていたと話す。1 音をそろえる精密さに加えて、奏者ごとの時間の感じ方を受け取ることも、録音を作る仕事に含まれている。

同じリズムを、同じ位置だけで作らない

キックはバスドラムの音。ベースと一緒に曲の低音を支えるが、二つの音が始まる時刻を完全に重ねることだけが、組み合わせ方ではない。オズボーンの「少し後ろ」という言葉は、その関係を演奏の感触として表している。1

これは、曲全体の速さを落とすこととは違う。同じ拍を目印にしながら、二つの音の近づき方に差がある。先に鳴る音を受けて次の音が来る、と感じられれば、低音のまとまりにも小さな動きが生まれる。どれだけ遅れているかを数値にするより、ベースとキックが同じ拍の周りにどう位置しているかを考えると、説明が音楽に近づく。

取材では、ドラムにプログラムした音を重ねる予定があり、生のドラムを録る際には演奏者の感触を得ることが大事だった、ともオズボーンは語っている。1 繰り返す音を組み立てる作業の中に、人が演奏した時間の感じ方を残そうとしていた。バンドとダンス音楽が交わるところを、ジャンルの名前だけでなく、録音の一つの選択から捉えられる。

違うものができたとき、採る耳

ギタリストのマーク・デイは、原曲のギターを覚えたつもりで別のリフを弾いた。オズボーンは、その短い繰り返しのフレーズを原曲より良いと思って採ったという。1 再現を目指した演奏から新しい案が生まれ、その案を聞いた人が曲の中に居場所を与えた。

ヴォーカルのショーン・ライダーには、舞台でも使うSM58というマイクを選んだとオズボーンは回想する。1 ベースのタイミング、思いがけないギターのフレーズ、歌手に合わせた録音道具。並べてみると、制作には、演奏する人の性格を受け取り、それが生きる形を選ぶ仕事がある。

「少し後ろ」という説明を知った耳には、拍の位置に加えて、音同士が寄り添う距離も気になってくる。何もかも同時に鳴らすことで得られるまとまりと、人ごとの小さな差から生まれるまとまり。「Step On」の制作談は、その二つを聞き分ける言葉を渡してくれる。

出典・注

[1] Tom Doyle, Classic Tracks: Happy Mondays “Step On” / 第2頁, Sound On Sound, 2020年4月。1990年2月の制作についての取材。本文のタイミングはオズボーンの説明で、実測値ではない。2007年の再マスター工程を述べたものでもない。

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