一曲を、旅の途中に置く
一曲を作る人が、他の人の曲も選んでひとつのミックスにするとき、自作曲はどんな役目を持つのだろう。ソフィア・クルテシス(Sofia Kourtesis)とノバリマ(Novalima)による「Los Poemas No Siempre Riman」は、『DJ-Kicks』のために彼女が書いた四つの新曲の一つだ。1 『DJ-Kicks』はDJがミックスを編むシリーズだ。2 この曲を入口にすると、作曲と選曲が同じ作品を形づくる、その接点が見えてくる。
曲の集まりに、動きを作る
DJミックスは、複数の曲をひと続きの音楽として組むものだ。個々の曲の魅力に加えて、順番やつながりが全体の進み方を作る。ある曲の後で次の曲がどう聞こえるか、勢いを保つか、気分を変えるか。選曲は、その時間の流れを組み立てる仕事でもある。
公式Bandcampの盤紹介で、ソフィアはDJコーツェ(DJ Koze)の『DJ-Kicks』を繰り返し聴き、優れたミックスは人を旅に連れていくものだと学んだと語っている。自分のミックスでは感情、緊張、解放を求めたとも話す。2 ここでの「旅」は、訪れる土地の話よりも、音楽の進行に伴って受け手の気分が動くことを指すと読める。
新曲を書くことが加わると、選べる曲の集まり自体も変わる。既存の曲から流れを考え、その流れに自作曲を置く。逆に、自作曲があることで、その前後に選びたくなる曲が変わることも考えられる。本曲が実際にどちらの順序で作られたかは語られていないが、四つの新曲を含むこのミックスには、作ることと選ぶことを行き来できる余地がある。
音楽へ戻る時間を、ひとつの形にする
盤紹介は、ソフィアが母を亡くした悲しみの中でミックスをまとめていたことを伝えている。本人は、ペルーに戻ることで母を近くに感じ、少しずつ音楽が力として戻ってきたと話す。2 これはミックス全体の背景である。個々の曲を母へのメッセージとして読み解くより、どんな時間の中で曲を集め、その流れを作ったのかを知る手がかりになる。
「Los Poemas No Siempre Riman」は、その集まりに彼女自身が加えた曲でもある。Qobuzではソフィアにプロデューサーとプログラマー、ノバリマにアーティストと演奏参加のクレジットがある。3 どの楽器を誰が担当したかは、この表記からは分からない。それでも、自分が選ぶ音楽の中に共作曲を置くという構図は読み取れる。
ミックスの一曲は、単独で完結する曲であると同時に、前後の曲の受け取り方にも関わる。そう考えると、DJの署名は選んだ曲の一覧にだけあるのではなく、その並びが生む変化にもある。ソフィアが求めた緊張や解放は、ひとつの曲に背負わせるより、曲から曲へ移る時間の中で考える方が、ミックスという形式をよく捉えられる。
出典・注
[1] Stereobarの新曲紹介(2026年2月11日)。Novalimaとの共作、新曲四曲の位置づけ。
[2] 公式Bandcamp『DJ-Kicks: Sofia Kourtesis』の盤紹介と本人の発言。発売日は2026年3月27日。喪失とミックスの構想に関する説明は盤全体に対するもの。
[3] Qobuz『DJ-Kicks: Sofia Kourtesis』の曲別クレジット。ここでは演奏参加という役割までを扱う。「Mixed」表記の版との編集上の対応は未確認。