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2024年1月19日 追加

Madres

Sofia Kourtesis / Madres ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

母たちの曲が、一人の医師への頼みになった

「Madresに性別はない」。ベルリンを拠点にするペルー出身のソフィア・クルテシス(Sofia Kourtesis)は、2023年3月14日にNinja Tuneから出した単曲「Madres」について、そう書いた。この曲は自分の母、その母、母である姉妹や兄弟、そしてコミュニティの母であるLGBTQIA+の人たちの歌だ、と。1

"If you get lost, follow your mother's voice, they will always bring you back."(迷ったら母の声に従って。いつも連れ戻してくれるから)1

断片と約束

同じ声明の後半で、彼女はこの曲を脳外科医ペーター・ヴァイコツィ(Peter Vajkoczy)にも捧げている。自分の母の希望になった人だ、と。1 父を亡くして数か月後、母が重い病と診断されていた。2 Ninja Tuneがアルバムの告知に載せた紹介文によれば、どの医師にも手術は危ないと言われた彼女は、ほんの数分でも時間をもらえるなら曲を捧げると約束して、曲の断片をSNSに載せた。ヴァイコツィは応じ、手術は成功した。3 音楽サイトBeats Per Minuteのクリスティ・ソーヤー(Kristy Sawyer)は、そのとき載せた断片が「Madres」だったと書いている。4 医師の名を題に持つ曲は別にあり、10月に出たアルバム『Madres』の3曲目「Vajkoczy」がそれだ。45

彼女の名を広めた単曲「La Perla」は、父の死を主題にしていた。2 アルバムの発売前にNMEの取材を受けた彼女は、これまでは機械に語らせてきた、クラブやフェスでかけられるいいビートを作ることが中心だった、と振り返った。記事は、いまの彼女はもっと深く掘り下げたがっている、と続けている。6

踊る人の肩に

単曲が出て3日後、NPRのミゲル・オタローラ(Miguel Otárola)は、踊ることは妙に孤独な体験だと書き出した。体は集まっていても、目を閉じてそれぞれに動いている。クルテシスはそこに集団の意味を持ち込もうとする、と。彼の読みでは、この曲の彼女は踊る人の肩に立つ天使の姿をとる。柔らかな脈と泡立つアルペジオは、電子音楽の場を占める速く攻撃的な音への解毒剤にもなる、とも書いた。7

Beatportの表示では124 BPM、Dメジャー、ジャンルの欄はDeep House。同じ頁には、アンドヒム(Andhim)やジ・アストン・シャッフル(The Aston Shuffle)らDJが組んだおすすめの一覧に、この曲が入っていると出る。8 アルバムでは1曲目に置かれた。Resident Advisorのジオ・サンティアゴ(Gio Santiago)は表題曲を、母が語り手のような熱帯的なハウスと評し、ひと言でこうまとめた。5

"'Madres' is diasporic nostalgia personified."(「Madres」は、故郷を離れた者の郷愁が姿をとったものだ)5

アルバムを作るあいだ、ヴァイコツィは曲を聴かせる相手になった。彼女は彼を、彼にとって初めてのベルクハイン(Berghain)へ、ベルリンの夜に連れて行ってもいる。36 SNSに載せた曲の断片から始まった縁が、夜のフロアまで続いたことになる。

出典・注

[1] Sofia Kourtesis, Madres, Bandcamp(本人頁)、2023年3月14日。本人の声明(性別はない、誰の歌か、母の声の一文、ヴァイコツィへの献辞)と発売日・レーベルに使った。紹介文は発売時の宣伝文で、本人の言葉はその中の引用。同じ声明はDJ Mag(Olivia Stock、2023年7月27日)にも引かれており、独立の資料には数えない。この頁の曲目は1曲で03:56。

[2] Olivia Stock, Sofia Kourtesis announces debut album, 'Madres', shares single: Listen, DJ Mag、2023年7月27日。父の死の数か月後の診断であること、出世作の単曲「La Perla」の主題が父であることに使った。病状の記述は本文に移していない。

[3] Ninja Tune, Madres, Bandcamp(本人頁)、2023年10月27日。アルバムの告知の紹介文(レーベルの宣伝文)。医師たちの見立て、断片をSNSに載せた約束、手術の成功、制作中に曲を聴かせる相手になったこと、彼にとって初めてのベルクハイン行きに使った。紹介文は断片がどの曲だったかを書いていない。ベルクハインの件はNME([6])も書いている。

[4] Kristy Sawyer, Album Review: Sofia Kourtesis – Madres, Beats Per Minute、2023年10月30日。SNSに載せた断片が「Madres」だったという記述と、約束どおり曲の題に医師の名を付けたという記述に使った。断片の曲名を書くのはこの評だけで、本人の言葉としては確かめていない。

[5] Gio Santiago, Sofia Kourtesis - Madres, Resident Advisor、2023年10月27日。アルバムの曲順(1曲目「Madres」、3曲目「Vajkoczy」)と、表題曲の評・引用に使った。評は同じ段で表題曲の歌詞にも触れるが、本文には移していない。

[6] Hannah Mylrea, Sofia Kourtesis lights up a beacon of hope on 'Madres', NME、2023年10月12日。機械に語らせてきた、クラブやフェス向けのビート、もっと深く掘り下げたいという記者の地の文に使った。アルバム全体についての談話で、この曲を名指したものではない。

[7] Miguel Otárola, Sofia Kourtesis, 'Madres', NPR #NowPlaying、2023年3月17日。踊ることの孤独と集団の意味、肩に立つ天使の読み、柔らかな脈とアルペジオ、解毒剤の評に使った(記者の地の文)。天使の読みは歌詞から引いたもので、歌詞の行そのものは本文に移していない。

[8] Beatport, Madres (Original Mix), 曲のページの表示。BPM・キー・ジャンル、長さ3:56、Ninja Tune、3/14/23、「Appears On」に並ぶDJのチャート(Andhim、The Aston Shuffleほか)に使った。チャートの日付と、DJが実際にかけたかどうかは頁からは分からない。

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