声を招いた版から、声を外す
2019年6月5日、Pan African Music(PAM)は、フランスのビートメイカー、ガッツ(Guts)が「Kenke Corner」のリミックスを制作者のポワリエ(Poirier)に頼み、ポワリエはモザンビーク生まれの歌い手サミート(Samito)を招いた、と伝えた。記事はその仕上がりを、ダンスフロア向きの版と呼んでいる。1 ここで扱うのは、その版から声を抜いたインストゥルメンタル版だ。それでも題には「feat. Samito」が残っている。23
原曲と、リミックス
原曲は、2019年3月29日にHeavenly Sweetnessから出たガッツのアルバム『Philantropiques』の一曲。1 5月9日に載ったPAMの取材で、ガッツは原曲の狙いをこう話した。
"The idea with “Kenke Corner” was to compose an hymn to Ghana’s highlife."(「Kenke Corner」の考えは、ガーナのハイライフに捧げる讃歌を作ることだった)4
着想元は、ラゴスのEMIのスタジオで録られた1977年のパット・トーマス(Pat Thomas)の盤で、ハイライフではいつもそこへ立ち返るという。4 Appleの表示では、原曲は6分27秒、サミートを迎えたポワリエのリミックスは5月17日付で4分46秒だ。3
Ninja Tuneの紹介によれば、ポワリエはモントリオールを拠点に、ダンスホールやソカを電子音と混ぜてきたDJ・制作者だ。5 2020年のCult MTLは、サミートを彼の長年の協力者の一人に数えている。6 ポワリエのリミックスで声の担い手が並ぶ例は、「Koul Dan Mon Do」のエッセイにもある。
声のある版と、ない版を組にする
ポワリエとサミートには、声のない版の前例がある。2017年10月20日にWonderwheelから出たポワリエのEP『Be Alright』の紹介文(宣伝文)は、「Sowia」をカナダとモザンビークにつながる歌い手サミートがポルトガル語で歌う曲と書き、EPを締める「Antilles Trax」を「Sowia」の長いインストゥルメンタル版と説明している。7
「Kenke Corner」では、盤の側が二つのリミックスをどちらもインストゥルメンタル版と組にした。ガッツの公式Bandcampに載る12インチは、ポワリエの版とヴォアラー(Voilaaa)による「Mucagiami」の版を、それぞれ歌入りと声なしの二つで収め、ほかに商品説明が"unreleased"と添える2曲(「L'Origine du Monde」「Sé Nou Menm」)が入る。12インチ(Bandcamp)の3曲目がこの4分45秒の版で、1曲目の歌入りは4分46秒、発売日は2019年8月16日の表示だ。2 Appleでは、原曲を加えた7曲の盤が9月20日付で、インストゥルメンタル版はその6曲目にある。3 表示の上では、声のない版の日付は歌入りより三、四か月遅い。『Philantropiques』の別の曲は「Voyaging Bird」のエッセイにある。
「Kenke Corner (Poirier Remix)」の名の版は、2020年1月、Nova Recordsの編集盤『Nova Danse 2020』にも4分43秒の表示で入った。題に「feat. Samito」は無く、長さも3秒短い。8
出典・注
[1] Guts releases remix EP for 'Kenke Corner' and 'Mucagiami', Pan African Music、2019年6月5日。リミックスの依頼とサミートを招いたこと、「dancefloor-oriented version」という評、『Philantropiques』の発売日とレーベル(記者の地の文)。
[2] KENKE CORNER EP, Guts公式Bandcamp。released August 16, 2019、6曲の曲目と長さ(1曲目 Kenke Corner (Poirier Remix feat. Samito) 04:46、3曲目 同 Instrumental Version 04:45)、「2 remixes (w/instrumental Versions) + 2 unreleased tracks」という商品説明、12インチ180g。
[3] iTunes Lookup API: Kenke Corner, Apple。7曲の盤の日付 2019年9月20日、℗ 2019 Heavenly Sweetness。1曲目 原曲 386,893ミリ秒(2019年3月29日付)、2曲目 歌入りリミックス 286,147ミリ秒(5月17日付)、6曲目 インストゥルメンタル版 285,090ミリ秒(9月20日付)。PAMの6月5日の記事はすでにリミックスEPの注文先を載せており、曲の日付は表示のまま扱う。
[4] Kino Sousa, Guts, inner journey of a modest and funky beat-digger, Pan African Music、2019年5月9日。『Philantropiques』の曲ごとの着想を本人が語る項のうち「Kenke Corner」(直接引用はここから)。原曲についての話で、リミックスについてではない。
[5] Poirier, Ninja Tune公式の紹介文。掲載日の記載なし。モントリオールの拠点、ダンスホール・ソカ(レーベルの紹介文)。
[6] Erik Leijon, Poirier brings good vibes to the people with Soft Power, Cult MTL、2020年6月。サミートを長年の協力者に数える記者の地の文。
[7] Be Alright EP, Poirier公式Bandcamp(紹介文はWonderwheelの名で書かれる)。released October 20, 2017、「Sowia ft. Samito」と「Antilles Trax」についてのレーベルの紹介文(宣伝文)。
[8] iTunes Lookup API: Nova Danse 2020, Apple。2020年1月10日、℗ 2020 Nova Records、9曲目「Kenke Corner (Poirier Remix)」282,914ミリ秒。歌入りの版と同じ録音かは確かめていない。