作り替える人の横に、誰がいるか
曲名に一人のリミキサーの名前が付くと、その人が作り替えた仕事に目が向く。「Koul Dan Mon Do」のポワリエ(Poirier)版では、歌、打楽器、電子音を担う人の名前も並ぶ。リミックスを、曲を加工する仕事から、複数の人の仕事を組み合わせるものとして考えてみたい。
声、打楽器、プログラミング
First Wordの紹介は、スーレアンス(Souleance)とインド洋のレユニオン島の音楽、セガとのつながりを挙げる。クレオール語で歌うカルーン(Kaloune)と、パパテフ(Papatef)のドラム、パーカッションにも触れている。1
リミックスの公式掲載では、歌唱にカルーン、ドラム・パーカッション・フルートにパパテフことシリル・アテフ(Cyril Atef)、シンセ・ビート・ドラムのプログラミングにフルジャンス(Fulgeance)が記される。2 プログラミングは、音を鳴らす順序やタイミングなどを設定する仕事だ。打楽器を演奏する担当と、その鳴り方を電子的に組む担当を、名前ごとに見ることができる。
歌と打楽器を挙げる紹介に、電子音の担当を並べると、リミックスの名前だけでは見えなかった仕事が具体的になる。音を作り替える一人に加えて、その素材となる歌や演奏を担う人がいる。クレジットは、加工の手順を示すものではないが、曲を成り立たせる仕事を分けて考える手掛かりになる。
関係を作る時間も、制作のうち
2020年の『Soft Power』をめぐる取材で、ポワリエは、音楽作りは一晩の出来事ではなく、関係を築くことだと話している。歌い手と音源を送り合う方法より、電話や対面で暮らしについて話すことを重んじるという。3
この話は、制作の時間を、音を録る時間だけで数えない視点を与える。相手が何を考え、何を大切にしているかを知ることも、一緒に作るための仕事になる。担当名から制作を読むときにも、それぞれの音を誰が用意したかに加えて、人同士がどう作業を共有できるようになるかという問いが残る。
出典・注
[1] First Word「Koul Dan Mon Do (Poirier Remix)」。レーベルの紹介で、歌詞の意味やリミックス固有の新録を示すものではない。
[2] Souleance公式Bandcamp「Koul Dan Mon Do (Poirier Remix)」(掲載発売2023年11月10日)。掲載版の担当。どの音を原曲から受け取り、どれを新しく録ったかは未確認。パパテフとシリル・アテフの名義対応はLa Petite Halleの紹介も参照。
[3] Erik Leijon, Cult MTL「Poirier brings good vibes to the people with Soft Power」(2020年6月19日)。当時の一般的な制作談で、本曲の相手との会話やセッションを記録した話ではない。