作曲家が、別の名で置いた一曲目
2009年11月、Club Fonogramaのカルロス・レイエス(Carlos Reyes)は、キング・コヤ(King Coya)の正体がガビー・ケルペル(Gaby Kerpel)だと知って驚いた、と評を書き出した。アルバム『Cumbias de Villa Donde』の1曲目「Villa Donde」を聴いて、彼はモンゴルの喉歌ホーミーを思い出したという。
"a very deep exclamation of throat-singing trickery"(喉歌の技巧による、とても深い叫び)1
別名の盤
ZZK Recordsの紹介は、キング・コヤを、De La GuardaやFuerza Brutaの名を添えたガビー・ケルペルの「踊れる別人格」と呼び、この盤でのデビューの後、彼がアマドゥ&マリアム(Amadou & Mariam)やトム・トム・クラブ(Tom Tom Club)などのリミックスを手がけたと書く。2 レイエスは、この別名を、主に人から借りたクンビアでできた盤から、作者としての自分を少し離しておく方法と読んだ。それでも、どの曲にも彼の署名が残っている、とも書いている。1
公式Bandcampでは、盤の発売は2009年7月1日。10曲のうち2〜4曲目と7曲目は、ペトロナ・マルティネス(Petrona Martínez)やルラクルサ(Lulacruza)らの曲のリミックスや別版で、4分44秒の「Villa Donde」は、ゲストの名を題に付けずに盤を開ける。同じページのレーベルの紹介文は、ケルペルをDe La GuardaとFuerza Brutaの音楽を書いたアルゼンチンの作曲家と紹介し、キング・コヤの曲はブエノスアイレスのZizek Clubで、踊る客の前で演奏したライブ・セットから生まれたと書く。宣伝文である。3
Zizekという夜
ZZKの共同創設者ギジェルモ・カナレ(Guillermo Canale)、別名DJ Nimは、2010年8月、Sounds and Coloursのラス・スレイター(Russ Slater)に、Zizek Clubの始まりを話した。多くの死者を出したディスコの火事の後、規制で小さなクラブが閉じ、新しい音楽を聴きに行く場所がなかった。そこでクンビア、ヒップホップ、レゲトン、ダンスホール、ダブステップを混ぜてかける夜を始めると、かかる音楽のほとんどが未発表のオリジナルだった。それを世界へ出そうと考えたのがレーベルの始まりで、毎週の夜の客は300人ほど、デジタル・クンビアは地元でもまだ知る人の少ない音楽だという。4
同じレーベルから出たニコラ・クルス(Nicola Cruz)の曲は「Arka - con Esteban Valdivia」のエッセイに、ラテンアメリカの録音が誰の手でどこのフロアへ運ばれたかはラテンアメリカとリミックスの特集にある。
同じ曲の、二つの聴き方
レイエスが喉歌を思い出したこの曲に、2009年12月28日のXLR8Rでマックス・ハーマン(Max Herman)は、なまめかしい、遅く低いリディムを聴いた。盤はそこから色を増していき、「Trocitos De Madera (KC Version)」でクラブへ連れていき、「Cumbiatron」で落ち着いた場所へ戻す、と彼は書く。5 一人は喉歌を連想させる響きに、もう一人は速さと低さに耳を向けて、同じ一曲目を書いている。
出典・注
[1] Carlos Reyes, Cumbias de Villa Donde, King Coya, Club Fonograma(アーカイブ)、2009年11月(URLの年月)。盤の評(評者の記述)。ケルペルが正体だと知った驚き、別名についての読み、「Villa Donde」がホーミーを思い出させたという記述(直接引用はここから)。
[2] King Coya, ZZK Records公式(スペイン語)。日付の表示なし。2018年の『Tierra de King Coya』を紹介する現在の文面。「alter ego bailable de Gaby Kerpel (De La Guarda, Fuerza Bruta)」の記述と、2009年のデビュー以後のリミックスの相手の列挙を使った。
[3] Cumbias de Villa Donde, King Coya公式Bandcamp(ZZK Records)。released July 1, 2009、10曲の曲目と長さ(1. Villa Donde 04:44)、紹介文(レーベル側の宣伝文。作曲家としての紹介、Zizek Clubのライブ・セットの記述)。
[4] Russ Slater, The Story of ZZK Records – Argentina's home of digital cumbia, Sounds and Colours、2010年8月2日。カナレの言葉(Zizek Clubの始まり、火事の後の閉店、未発表曲、客の数)。カナレは火事を「2006年」と言うが、本文では年を書いていない。キング・コヤや「Villa Donde」への言及はない。
[5] Max Herman, King Coya Cumbias de Villa Donde, XLR8R、2009年12月28日(ページには2019年8月17日の更新日も表示)。盤の評(評者の記述)。