アルバムの一曲目に置かれた、異例の一曲
2009年3月26日、米国の公共ラジオNPRの番組で、批評家ロバート・クリストガウ(Robert Christgau)は、マリの二人組アマドゥ&マリアム(Amadou & Mariam)の『Welcome to Mali』を取り上げ、1曲目の「Sabali」を、とても異例な、鍵盤が主役の曲と呼んだ。この曲のどこがアフリカ的なのか、ただの安っぽいフランスのエレクトロポップじゃないか、と言う人もいるだろう。それはその通りだ、と彼は認めたうえでこう続ける。
"terrific, even daring cheesy French electropop"(すばらしい、大胆でさえある安っぽいフランスのエレクトロポップ)1
欧米の聴き手に媚びるアフリカの作り手はたいてい妥協したように聞こえるが、この盤の二人はどこからでも着想を取り込み、楽しんでいるように聞こえる、というのが彼の評だった。1
客演のプロデューサー
大西洋の反対側では、2008年11月の英Uncutの評が、盤の大半はそれまでの二人のアルバムの大半を手がけたマルク=アントワーヌ・モロー(Marc-Antoine Moreau)とローレン・ジャイス(Lauren Jais)の制作だが、要の客演プロデューサーはデーモン・アルバーン(Damon Albarn)で、先頭の曲「Sabali」を制作し、共作もしたと書いた。評者はこれを二人にとっての大きな方向転換と呼ぶ。アルバーンは、自分のオペラ『Monkey』やゴリラズ(Gorillaz)の曲でおなじみの、東洋風のゲームのような鍵盤のリフを、ヴォコーダー(声を電子的に加工する機器)の助けを借りたマリアムの不気味なほど高い声に当てた、と評は書き、結果をディジー・ラスカル(Dizzee Rascal)とジョルジオ・モロダー(Giorgio Moroder)がアーシャ・ボースレー(Asha Bhosle)とボリウッドの映画音楽で組んだような音、とたとえた。2
同じ頁の短い問答で、アマドゥ・バガヨコ(Amadou Bagayoko)は、アルバーンとはマリ、コンゴ、ロンドンで会い、アフリカの音楽家に英国で光を当てる彼の企画Africa Expressにも加わったと話している。盤はパリ、バマコ、ダカール、ロンドンで1年かけて録ったが、自分たちは今もマリに住んでいる、それが大事なのだ、とも言う。2
1曲目の3分16秒
公式Bandcampでは、盤の発売は2008年11月17日、「Sabali」は14曲の1曲目で3分16秒だ。3 2009年4月のNPRの番組World Cafeの紹介は、二人がマリの盲学校で出会い、1980年代に録音を始めたと書き、この単曲を批評家の寵児になった曲と呼んでいる。4 15年後、フランスのフォラモール(Folamour)が二人を迎えた「Voyage」は「ハウスを修飾する言葉」の特集で、アルゼンチンのキング・コヤ(King Coya)が二人のリミックスも手がけたことは「Villa Donde」のエッセイで触れている。
Uncutの問答でアマドゥは、アルバーンを、いつも解決策を探し、物事の理由を知ろうとする人だと話している。2
出典・注
[1] Robert Christgau, Amadou And Mariam: Well Beyond Mali, NPR(All Things Considered)、2009年3月26日。盤の評(評者の記述。直接引用はここから)。
[2] Amadou & Mariam – Welcome To Mali, Uncut、2008年11月5日(頁の日付。評の末尾の署名はJohn Lewis)。盤の評(制作陣、「Sabali」の制作と共作、方向転換、音のたとえ)と、ジョン・ルイスによるアマドゥ・バガヨコへの短い取材(アルバーンとAfrica Express、録音地、アルバーンの人柄)。
[3] Welcome to Mali, Amadou & Mariam公式Bandcamp。released November 17, 2008、曲目と長さ(1. Sabali 03:16)。
[4] Amadou And Mariam: Afro-Pop Goes Global, NPR(World Cafe)、2009年4月22日。紹介文(盲学校での出会い、1980年代の録音開始、「critical darling」)。