音を鳴らす前に、何を用意するか
マイド(Myd)の「Domino」を紹介するプレス文は、声のチャント、スライドギター、リズムを並べる。1 完成した曲を音の組み合わせとして読む一方、前年の本人取材には、音を鳴らし始める前にスタジオを整えたという話がある。曲の中の音と、その音を選ぶための環境を分けて見ると、制作の準備も音楽の仕事として見えてくる。
一つの曲の名義と、共作の名前
FindYourSoundsに掲載されたプレス紹介は、「Domino」にジャングル(Jungle)のトム・マクファーランド(Tom McFarland)が共同制作で参加したと伝える。声のチャントは、短いフレーズを唱えるような歌声を指す紹介語だ。1
Qobuzの曲別欄は、マイド、マクファーランドに加え、サム・ティバ(Sam Tiba)とカルロス・ラヴァーボーイ(Carlos Loverboy)を作曲者として挙げ、マイドにプロデューサーの役割を付ける。2 曲がマイドの名で出ていても、作る仕事の記録は一人の名前だけではない。紹介が目立たせる共演相手だけでなく、曲別の記録からほかの作り手の名も見えてくる。
音を選ぶための部屋を作る
マイドは2021年のCULTRの取材で、『Born A Loser』を作る際、リビングの中央に理想のスタジオを作ったと話す。ギター、アンプ、ヴィンテージのシンセサイザー、テープレコーダーを置き、音を鳴らす前に、そのスタジオが自分の望む音になるようにしたかったという。3
楽器をそろえることは、何を演奏できるかを決める。部屋を整えることは、その演奏をどう受け取り、選び直すかにも関わる。これは前年のアルバムの話だが、「Domino」の紹介にある声やギターを、完成品の特徴だけとして眺める習慣を広げてくれる。曲の担当者を確認した先には、作り手が音を選ぶために用意する環境もある。
出典・注
[1] FindYourSounds, Myd releases soaring new single “Domino” co-produced by Tom MacFarland。Ed Banger / Becauseが伝える曲の紹介。歌声やギターの具体的な担当は未確認。
[2] Qobuz, Domino。曲別のComposer、Producer表示。掲載3:35とライブラリの3:36には差があり、同じ録音かは確認できていない。この欄でプロデューサーと記されるのはマイドのみ。
[3] Brendan Hanson, Ed Banger’s Next Sensation Myd: Exclusive Interview and Debut Album, 2021年5月13日。『Born A Loser』の工程。「Domino」の録音場所・機材を示す発言ではない。