同じ曲に、違う時間を与える
デレ・ソシミの『You No Fit Touch Am』Deluxe Editionには、メドラーの9分30秒のリミックスと、4分33秒のラジオ版が並んでいる。1 掲載尺を比べると、ラジオ版はリミックスの半分以下だ。曲を別の人に渡すことと、聴き手に渡す長さを変えること。その二つの仕事を、曲名の後ろに付いた「Medlar Remix Radio」から考えられる。
原盤を作る人、別の方向へ動かす人
2015年、原盤アルバムの発売を前に、ソシミはアフロビートの音楽を発展させ、改めて示し直したいと語っていた。自主制作・自主発売した二作を経て、三作目には条件とレーベルと時機がそろうのを待ったという。取材したOkayAfricaは、そのアルバムを1970年代のナイジェリア・ラゴスの作曲法を示す作品として紹介している。2
ここでの「示し直す」は、ソシミ自身が取り組む音楽を、現在へ向けて作るという構想だ。その後のリミックスでは、作られた曲を別の音楽家が受け取り、違う文脈へ置く仕事が加わる。
発売元が載せた推薦コメントで、ジョン・ウォーは、メドラーのリミックスが表題曲を1980年代のディスコの領域へ運ぶと評する。デビー・ゴルトは、控えめで往年のニュアンスがあると述べている。3 前者は曲の向かう先、後者は変化の手加減に注意を向ける。行き先を変えることと、細かなニュアンスを残すことを一緒に考えると、リミックスの「変える」にも、いくつもの程度があると分かる。
長さを変えると、注意の配分も変わる
2023年のラジオ版は、発売元がメドラーのリミックスのradio editとして紹介したものだ。3 ソシミの2015年の構想、別の音楽へ運ぶリミックス、短い時間に収める編集。三つを並べると、同じ曲の周りで、そのつど違う判断が必要になる。
9分30秒と4分33秒という差は、聴き手が曲の中で過ごす時間の差でもある。長い版と短い版を比べるとき、曲のどこを切ったかに加えて、どの出来事へ早く行き着くようになったかが気になる。同じフレーズに何度会うのか、次の展開をどれだけ待つのか。長さを変える作業は、そうした待ち方や覚え方に関わる。
この曲のラジオ版の具体的な編集箇所は、掲載情報からは分からない。だからこそ、二つの長さは、曲を短く説明するための数字以上の手掛かりになる。一曲の魅力がどこに集められ、どこに時間を与えられるか。「Medlar Remix Radio」という名前には、曲を書いた人、組み替えた人、その組み替えをさらに届けやすくした形が重なっている。
出典・注
[1] You No Fit Touch Am (Deluxe Edition), 公式Bandcamp。掲載された二版の曲目と尺。単曲カタログにはラジオ版4:34の表示もある。
[2] killakam, Dele Sosimi On “You No Fit Touch Am,” His First Album In Nearly A Decade, OkayAfrica, 2015-05-20。原盤アルバムについての本人取材。後のラジオ版の制作談ではない。
[3] You No Fit Touch Am (Medlar Remix Radio), Wah Wah 45s / Kudos。2023-04-28発売の単曲掲載。転載された二つのコメントはメドラーのリミックスについての評で、Radio版固有の評として用いていない。