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2024年8月11日 追加

Funky Kingston

Toots & The Maytals / Funky Kingston ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

同じ名前の、違うアルバム

「Funky Kingston」は、曲の名前であり、トゥーツ・アンド・ザ・メイタルズ(Toots & The Maytals)のアルバムの名前でもある。ところが、1973年の『Funky Kingston』と、1975年に米国で出た『Funky Kingston』は、同じ一枚ではない。

1975年の米盤は、1973年の同名盤と翌年の『In the Dark』から曲を選び、1969年のシングル「Pressure Drop」を加えた編集盤だった。1 米国の聴き手に向けて組み直された一枚である。2 新しい録音を並べるだけでなく、すでにある曲を選ぶ仕事も、音楽が別の国へ届くときに働いていた。

米国へ渡る盤と、ラジオから届いた歌

米国向けに組まれたアルバムの歌手は、そのずっと前から米国の歌手を聴いて育っていた。2018年のインタビューでトゥーツ・ヒバートは、子供の頃に好きだった米国の歌手として、エルヴィス・プレスリー、レイ・チャールズ、ジェームス・ブラウン、リトル・リチャード、マヘリア・ジャクソンを挙げた。ラジオを聴いていたという。両親の教会で歌い始めたか、という問いにも肯定している。3

教会で自分の声を出すことと、ラジオから好きな歌手の声を聴くこと。後年の回想に並ぶこの二つの経験は、トゥーツという歌手を、レゲエという分類の中だけで考えるよりも広く捉えさせる。

1975年の編集盤を、ジャマイカの音楽を米国に紹介した出来事として読む。それにトゥーツの回想を重ねると、音楽の行き来は一方向ではなくなる。米国の歌手を聴いて育った人が、自分たちの曲を米国へ送り出す。この二つの時点をつなぐと、アルバムが海を渡るという話にも、人の耳を通る音楽の履歴が加わる。

一つの和音の上で、異なる役割が重なる

表題曲にも、複数の音楽が交わるところがある。評論家ウェイン・マーシャルは、一つの和音を土台にするベースラインと、レゲエのドラム、ピアノとリズムギターの裏拍を挙げ、ソウルやファンクとの釣り合いを評している。2 ジェフ・チェアマン・マオも、この曲がファンクとR&Bの影響を自然に取り込んでいると述べる。1

一つの和音というのは、音の高さが一つしかないという意味ではない。ベースが保つ和音の土台と、鍵盤やギターが音を置く位置は、別の役割である。マーシャルの挙げた構造では、同じ和音を支えることと、裏拍を刻むことが同時に働く。和音が次々に変わることだけが、曲の動きを作るのではない。

トゥーツがジェームス・ブラウンを好きだったという回想と、「Funky Kingston」にあると評されるファンクの要素は、ここで隣り合う。好きだった歌手の名前と曲の仕組みを合わせて考えると、ジャンルの境界を、歌手の聴いてきた音楽と演奏の組み合わせの両方から捉えられる。ファンクのリズムには、その組み合わせを考えるための、反復と拍の位置という話がある。

次は1975年盤から、1973年の『Funky Kingston』と『In the Dark』へ戻って聴いてみたい。編集盤で隣り合っていた曲が、元の二枚ではどこに置かれているのか。「Funky Kingston」という同じ名前の下にある違いは、曲だけでなく、一枚を組む人の選択も音楽の一部であることを教える。

出典・注

[1] Jeff Chairman Mao, “‘Funky Kingston’: Toots And The Maytals’ Classic Collection”, uDiscover Music, 2025年3月1日。1975年米盤の編集構成を参照。

[2] Wayne Marshall, “Funky Kingston”, Pitchfork, 2020年3月22日。英国盤と米国盤の履歴、表題曲の音楽的な特徴を述べた批評を参照。

[3] Angus Taylor, “Interview: Toots Hibbert and his grandson King Trevy in Kingston”, United Reggae, 2018年4月3日。Toots本人が語る教会とラジオ、好きだった歌手の回想を参照。

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