ファンクのリズム
「ずれ」と「戻り」を聴く
ファンクのリズムを知る手掛かりとして、ジェームス・ブラウンの音楽を考えてみよう。同じ短い型の反復の中で、どこに音が置かれるのか。その仕組みを考える鍵になるのが、拍の位置とシンコペーションだ。ここではブラウンの曲を分析した論文と音楽教材をもとに、聴くときに注目できる点を整理する。
拍を取りながら、その間の音を探す
まず、曲に合わせて「1、2、3、4」と等間隔に拍を取ってみる。拍は、リズムを数える基準になる。ここでは、四分音符を1拍とする4/4拍子を考える。四拍がひとまとまりになり、そのまとまりが一小節だ。
拍の上だけに音があるとは限らない。「1と2と3と4と」と数えれば、「と」は隣り合う拍の中間にある。ここでいう裏拍は、そうした拍の間の位置である。手で拍を取りながら、その手が動く間に鳴る音を探すと、拍の上と間を分けて聴きやすくなる。
Open Music Theoryの教材は、シンコペーションを、通常は強い拍や拍の強い部分に置かれるリズムの型が、弱い部分へ移ることと説明する。1 音が早まる型は、その一例だ。教材では、最初の音の長さを半分にし、続く音をその分早める変形を示している。
例えば、四つの音が「1、2、3、4」で鳴り始める型を考える。最初の音を半拍の長さにし、残りを半拍早めれば、鳴り始めは「1、1の〈と〉、2の〈と〉、3の〈と〉」になる。最初の音は拍の上に残り、続く三つの音は拍の間へ移る。
| 数える位置 | 1 | と | 2 | と | 3 | と | 4 | と |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 元の型 | ● | — | ● | — | ● | — | ● | — |
| 変形した型 | ● | ● | — | ● | — | ● | — | — |
●は音が始まる位置、—は新しい音が始まらない位置を示す。音が伸びているか止まっているかは、この表では区別しない。—は休符という意味ではない。この表は曲の採譜ではなく、教材の変形を「音の始まり」だけで比較した例だ。
裏拍の音を探す練習は、その型を聴き取るために役立つ。ただし、シンコペーションという語は、裏拍に音を連続させることだけを指すものではない。大切なのは、基準として感じている拍と、音が強調される位置の関係である。
短い型を繰り返す
音楽学者アレクサンダー・スチュワートは、ジェームス・ブラウンのドラマーたちの演奏を、一小節または二小節の型が繰り返されるものとして分析している。また、拍を四つに細分する16分音符の使い方を、ファンクのリズムを考える重要な要素として挙げる。2
四分音符を1拍とする4/4拍子で、一拍を四つに分けると、一小節には16の位置ができる。すべてを音で埋める必要はない。まず一定の拍を保ち、その細かな位置のどこに音が来るかへ耳を向ける。繰り返しを聴くときも、型の長さを探してみるとよい。
同じ一小節で戻るのか、二小節かけて戻るのか。それを区別するだけでも、次の音を待つ感覚が変わる。
「the one」は、型の先頭への戻り
スチュワートが列挙するブラウンのリズムでは、型の最初の小節頭にある強調と、後半のシンコペーションが釣り合っている。この先頭の拍が「the one」だ。2
後半で音の位置が動いても、型の先頭へ戻れば基準を確かめられる。二小節の型なら、戻るまでに二小節かかる。スチュワートは、その二小節型では二小節目の一拍目を強調しないと述べている。どの小節も頭を同じように強くする、という説明とは違う。
拍の上に戻る場所があるから、その間に置かれる音も目立つ。「ずれ」だけに耳を向けず、どこへ戻るのかも一緒に聴く。それが、この分析から得られる聴き方だ。
「Mother Popcorn」で二小節を比べる
Berkleeのスコット・マコーミックは、「Mother Popcorn」のベースの一部分を教材の例にしている。最初の小節では8分音符単位のシンコペーションが続き、次の小節には拍上のリズムの型がある。前の小節のシンコペーションによって、次の小節の拍上の動きが際立つ、と説明する。3
この箇所を聴くなら、ベースに注目して、拍上に戻る部分を探してみよう。二小節の対照をつかむための練習になる。
「拍」「小節」「繰り返す型」「シンコペーション」は、同じものを別の言葉で呼んでいるのではない。拍は数える基準、小節は拍のまとまり、型はその中に置かれた音の並び、シンコペーションは強い位置と弱い位置の関係を変える仕組みだ。この違いを知ると、リズムについての説明を音へ結び付けやすくなる。
次にはトゥーツ・アンド・ザ・メイタルズの「Funky Kingston」で、ベース、ピアノ、リズムギターへ順に注目してみる。それぞれの音が拍のどこに置かれ、何が繰り返されるのかを聴くための比較である。
出典・注
[1] “Syncopation in pop/rock music”, Open Music Theory / Hybrid Pedagogy Publishing。シンコペーションの定義と、拍を取りながら早まる型を聴き取る方法を参照。
[2] Alexander Stewart, “Make It Funky: Fela Kuti, James Brown and the Invention of Afrobeat”, American Studies 52:4 (2013), pp.106–107。Brownの演奏例の反復単位と強調位置の分析を参照。これらの型を、すべてのファンクに共通する条件とはしていない。
[3] Scott McCormick, “Two Cool Rhythmic Devices”, Berklee College of Music。「Mother Popcorn」のベースの教材例を参照。本文の拍を取る練習は、教材をもとにした聴き方の提案であり、曲の譜面の転載ではない。