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2024年9月20日 追加

Flip Ya Lid

Nightmares On Wax / In A Space Outta Sound ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

機動隊のライトのあとで

録音の合間の夜更け、出かけた先で。ナイトメアズ・オン・ワックス(Nightmares On Wax)のジョージ・エヴリン(George Evelyn)の車の横にバンが止まり、乗っていた機動隊員たちが車内を懐中電灯で照らした。一緒にいた歌い手リッキー・ランキン(Ricky Rankin)は少し怯えた。ブリクストンに住んでいる男がだよ、とエヴリンは振り返る。二人は車に戻り、ビートを組み始め、ランキンがフリースタイルで乗せた。1

"that whole song is just about people flipping their lid, and they just need to calm down."(あの曲はまるごと、頭に血がのぼった人たちのことで、みんな落ち着けばいいのに、という歌なんだ)1

2006年8月、musicOMHのベン・ホグウッド(Ben Hogwood)の取材で、エヴリンは「Flip Ya Lid」の生まれをそう話した。そのとき周りにあったものから生まれた曲だ、とも言っている。1

余った時間の一曲

2005年の夏、二人はフェスで何度も顔を合わせて意気投合していた。ランキンはエヴリンの別の曲のサビを歌いに来て、あまりに早く録り終えたので、時間がたっぷり残った、もう一曲やろう、となった。「Flip Ya Lid」はその合間の出来事から始まっている。1

曲は2006年のアルバム『In A Space Outta Sound』に入った。2 6月26日には、Warpから黄色の半透明の7インチでも出ている。3枚続きの2枚目で1000枚限定、盤の注記には、ハリス・シートン(Harris Seaton)作の「Africa Is Paradise」の要素を含むとある。3 Beatportの表示では85 BPM、Dメジャー。4

サウンドシステムで巻き戻す

2006年3月7日、PopMattersのティム・オニール(Tim O'Neil)は、ダブの色が続く盤の中でこの曲をダンスホール風の一曲とし、ヴィンテージのダンスホールの音を見事に今に更新したと書いた。60年代風のギターのリックと、本物のアナログのエコーに聞こえる響き(おそらくデジタルでの巧みな再現だ、と彼は付け加える)を挙げている。5

その年、エヴリンはこのアルバムでツアーを回った。同じ取材で彼は、この盤をいちばんよく伝えるのはサウンドシステムで、おそらく国でいちばんのシステムを使っている、それが自分たちの出どころを表すから、と話し、こう付け足した。

"Though there'll be a few rewinds on Flip Ya Lid, I'm sure!"(まあ、「Flip Ya Lid」では何度か巻き戻し〔掛け直し〕があるだろうね)1

20年後の2026年、Warpは記念盤の紹介文で、この盤がエヴリンの育ったレゲエとダブのサウンドシステムの根に着想を求めたと書き、「You Wish」と並べて「Flip Ya Lid」を象徴的な曲に挙げた。2 機動隊のライトのあと、その場の空気から組んだビートは、そうして盤の顔の一つになった。

出典・注

[1] Ben Hogwood, Nightmares On Wax: "I know what my sound is, what my feel is, I know what I'm into. It's me going deeper" – Interview, musicOMH、2006年8月3日。取材記事。曲の生まれ(録音の合間の夜の機動隊、車に戻ってのフリースタイル)、サビの録音と余った時間、サウンドシステムでのツアーと巻き戻しの言葉に使った。本人の話には、二人が夜更けに外周(perimeter、何の外周かは記事から不明)へ出た理由も語られているが、曲の話に要らない私事なので書かなかった。同じ取材で本人は「three limited edition EPs」にも触れるが、7インチ([3])の3枚続きと同じものかは記事から分からない。

[2] Nightmares On Wax, In A Space Outta Sound (20th Anniversary Edition), Nightmares On Wax公式Bandcamp(Warp)。released April 3, 2026。アルバムに入っていること(この版の曲順では3曲目、05:24)と、Warpの紹介文(レーベルの宣伝文)に使った。

[3] Discogs, Nightmares On Wax – Flip Ya Lid, API の release 705190 で読んだ。Warp Records 7WAP208、7インチ 45回転、Yellow Translucent、発売2006-06-26。盤の注記(「Number 2 in a series of 3. Limited to 1000 copies.」とサンプルの記載)の転記に使った。B面は「Da Mess Sticks」。

[4] Beatport, Flip Ya Lid, 曲のページの表示。BPM・キー。ジャンルの欄はElectronica、長さ5:24、掲載は2014年の編集盤『N.O.W. Is The Time』の版(ISRCはアルバムの版と同じGBBPW0500161)。Deezerの登録値では89.9 BPMで、サービスによって値が分かれる。

[5] Tim O'Neil, Nightmares on Wax: In a Space Outta Sound, PopMatters、2006年3月7日。この曲の評に使った。

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