My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2024年10月3日 追加

Sugar Water Dub

Hollie Cook / Hollie Cook in Dub (Prince Fatty Presents) ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 2 分

歌の下にあった音を、前へ出す

歌を支えていた音が、別の版では中心になる。ホリー・クック(Hollie Cook)の『Hollie Cook in Dub』について、プリンス・ファティ(Prince Fatty)は、歌の版に隠れていた楽器を表へ出したと説明している。1 「Sugar Water Dub」をその方針と曲別の評から読むと、ダブを作ることが、録音の中で何に耳を向けさせるかを選び直す仕事だと分かる。

ミックスを、もう一度の演奏にする

プリンス・ファティが盤全体の説明で挙げるのは、メロディカ、打楽器、ホーンといった材料、テープ・エコーと深いスプリング・リバーブだ。また、この盤のダブを自分のスタジオでライブ・ミックスしたと語る。1 ここでいうライブ・ミックスは、録音素材を再生しながら音量や効果を操作して、曲の形を作ることだ。

エコーは元の音から遅れて返る反復、リバーブは音の後ろに続く残響として考えると違いをつかみやすい。テープ・エコーは磁気テープへの録音と再生、スプリング・リバーブはばねの振動を利用する。仕組みと、響きだけを残す操作の意味はダブのガイドで説明している。

楽器が同じ録音の中に存在していても、何を大きくするか、何を引くかで、受け手が追う音は変わる。メロディを前へ出した後で直接の音を引き、その反復を残せば、直接の音が聞こえなくなった後にも響きが続く。これはミックスで考えられる操作例であり、「Sugar Water Dub」のどこで行われたかを示すものではない。盤の方針から読み取れるのは、音を加えることに加え、すでにある録音の聞かせ方を作るという発想だ。

歌の版へ、別の側から戻る

Apple Musicの編集文は、「Sugarwater Dub」を、深いサブベース、水の中のような効果音、ホースマン(Horseman)の低い声の差し込みが、不穏な音の景色を作る曲と評している。2 サブベースは、とりわけ低い音域のベース音を指す。ここでは声も、曲の音の景色を形づくる要素として書かれている。

盤の制作談が、歌の下にあった楽器を表に出す方針を伝える一方、この曲の評は声の存在も挙げる。ダブの仕事を、声を消して伴奏だけにすることに限ると、この組み合わせを捉えにくい。どの声を、どんな響きの中に置くかも、音の配置を作り直す仕事に含まれる。

このライブラリでは、2024年10月3日に「Sugar Water Dub」、翌4日に「Sugar Water」が追加されている。これは追加の履歴で、再生した順序や聴取の動機を示すものではない。ただ、ダブ版と歌の版をともに選んでいることは分かる。二つを聴き比べるときには、歌の有無だけでなく、歌を支えていた音がどれほど前へ出るか、声が全体の中でどんな位置を取るかを比べられる。ダブ版を先に知っていれば、歌の版で背景になった音にも、すでに注目する理由がある。

出典・注

[1] ホリー・クック公式Bandcamp『Hollie Cook in Dub』のプリンス・ファティ本人談。盤全体の方針であり、本曲の機器・処理順・操作箇所を確定する説明ではない。

[2] Apple Music『Hollie Cook in Dub (Prince Fatty Presents)』の曲別編集評。「Sugarwater Dub」という表記を使う。ホースマンへの言及は評の中のもので、曲別の正式クレジットではない。

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