作り直した曲を、三曲の始まりにする
「KATABUI」は、2013年の「KATABURI」をTOWA TEI自身が作り直した曲だ。本人は同じ曲だと説明しながら、リミックスという表記を付けず、違う曲として扱ったという。1 曲を作り直すことに加えて、どの名前で、どこへ置くか。一曲が聴き手へ渡る形にも、制作の判断は続いている。
名前を変え、アルバムへ移す
TOWA TEIによれば、元の「KATABURI」は『LUCKY』に入っていた曲だった。「KATABUI」は、作り直した後、まず配信だけで出していた。事務所のデスクからアルバムに入れないのかと聞かれたことが、『ZAMBIENT』への収録のきっかけになったという。1
作者が同じ曲だと認めることと、別の曲名を付けること。その間には、作品の関係をどのように見せるかという選択がある。旧題にリミックスの名を添えれば、聴き手はまず元の曲との関係を意識するだろう。新しい題名で出すときには、それ自体を一曲として受け取る余地が生まれる。これは名前の働きについての読みであり、本人がどの効果を狙ったかを決めるものではない。
さらに、アルバムに入ると、前後に別の曲が置かれる。一曲として出来上がっていても、その居場所を決める作業は残っている。
三曲を、一つのまとまりとして考える
『ZAMBIENT』のアナログ盤では、Side ZZの末尾に「KATABUI」「DEW MARIMBA TOUR」「THE PEARL & OYSTER」が並ぶ。2 本人はこの三曲を、組曲のような「エキゾ3連チャン」と説明している。1 この配置を読むと、一曲を収録することと、三曲をまとまりとして考えることが重なっている。
その終曲にも、最後の段階で選び直した音がある。TOWA TEIは「THE PEARL & OYSTER」について、高野寛のE-bowによるギターの長い音を、いったん仕上げの工程まで終わっていたアルバムへ追加したと話す。1 これは終曲の工程であり、「KATABUI」に同じギターが入るという話ではない。
E-bowは、弦を振動させ、持続する音を作るための道具だ。3 三曲のまとまりを考えるとき、その中には、昔の曲へ戻って作り直す判断と、最後に新しい音を加える判断の両方がある。曲を並べることは、完成した箱を順番に置くだけの作業とも限らない。曲を並べる仕事と、一曲の音を選ぶ仕事は、アルバムの仕上げでも関わり合う。
TOWA TEIは盤全体を「雑種アンビエント」と呼ぶ。2 混ざり合うのは音の種類だけでなく、過去の曲へ戻る時間、単曲を出した時間、アルバムを仕上げる時間でもある、と読める。「KATABUI」を旧曲と比べることに加えて、三曲の最初として捉えると、一曲の新しさは音の変更だけでなく、置かれた関係からも生まれると分かる。
出典・注
[1] 「TOWA TEI オフィシャルロングインタビュー・全曲解説」, TOWA TEI公式、2026年9月25日。「KATABUI」「THE PEARL & OYSTER」の本人解説を参照。旧曲からの具体的な音の変更内容は、ここでは確定していない。
[2] 『ZAMBIENT』告知, TOWA TEI公式、2026年5月25日。アナログ盤の曲順と本人コメントを参照。
[3] Ebow公式の製品説明。道具の一般的な仕組みの参照であり、この録音での機種・設定を特定するものではない。