控えたものを、あとから開く
ザ・エックスエックス(The xx)の2作目『Coexist』を録音していたあいだ、ジェイミー・エックスエックス(Jamie xx)は制作仕事とDJを休むようにしていたと話している。2012年9月、The Skinnyのブラム・E・ギーベン(Bram E. Gieben)の取材で、録音中に新しい電子音楽を聴いていたら、発売のころには古びた音になっていたかもしれない、とも語った。1 そのアルバムの一曲「Sunset」を、数か月後、彼は自分の手でフロア向けに作り替えた。
アルバムの中の「Sunset」
同じ記事でギーベンは、「Try」や「Sunset」にハウスなど電子音楽の痕跡は聴こえるが、それは太い筆致ではなく繊細な痕跡だ、と書いている。1 ジェイミーの説明では、録音は三人だけで一年間スタジオにこもる共同作業で、ほかには誰も建物にいなかったという。1 バンドのプロデューサーでありDJでもある一人が、新しい電子音楽から意識して距離を置いたまま、仲間と閉じた場所で作ったアルバムだった。
休んでいた側の手で
2013年1月3日、Stereogumのトム・ブライハン(Tom Breihan)は、ジェイミーが自作の「Sunset」をリミックスしたと伝えた。原曲をアルバムでもっともダンス寄りの曲とし、重い拍を強めたこの版を次のように形容している。
"a six-minute floor-filler, albeit one with a ton of negative space"(多くの余白を残した、6分のフロアを満たす曲)2
余白とは、音が鳴っていない隙間のことだ。同じ日、Exclaim!のジョサイア・ヒューズ(Josiah Hughes)は、長く勢いのある導入を加えた、冷ややかなディスコの版と書き、この版がiTunesの無料シングル『The xxmas』の一曲として、72時間の期限つきで無料配布されていると伝えた。3
二つの評は、足したものと残したものを同時に指している。アルバムでは繊細な痕跡とされた電子音楽の要素を、エディットは重い拍と長い導入で前へ出し、それでもブライハンの言う余白は残した。録音中に控えていたクラブの感覚を、発売後に、同じ曲の別の版として開いたと読める。
配り方の変化
この版は4月22日、もう一曲「Reconsider」のエディットと合わせた『Jamie xx Edits』としてBandcampに並んだ。表示は6:17。4 7月には、フランスの歌手リジー・メルシエ・デクルー(Lizzy Mercier Descloux)が1979年の「Fire」を歌う映像を合わせたビデオも出た。5 2014年2月にはDancing Astronautが、Future ClassicがRed Bull Music Academyとの無料配布の締めくくりとしてこの版を出したことを伝え、レーベルはオーストラリアのレーンウェイ・フェスティバルでこのエディットをライブで聴けると予告した、と書いている。6 期間限定の贈り物として出た版が、2曲入りの作品になり、映像を得て、一年後には別のレーベルの無料配布として、フェスティバルの予告と並んで出た。
ジェイミーが長く聴いてきた他人の音楽を自分の作り方に変えていく過程は、アヴァランチーズ(The Avalanches)との共作を読んだ「All You Children」のエッセイにある。「Sunset」のエディットで彼が手を入れた材料は、自分が一員で、プロデュースも担ったバンドの曲だった。2
出典・注
[1] Bram E. Gieben, Great xxpectations: Jamie xx talks Coexist and the future of electronic music, The Skinny、2012年9月4日。本人の録音回想と、記者のアルバム評。
[2] Tom Breihan, The xx – "Sunset (Jamie xx Edit)", Stereogum、2013年1月3日。エディットの紹介と評。
[3] Josiah Hughes, The xx "Sunset" (Jamie xx edit), Exclaim!、2013年1月3日。無料シングルでの配布と評。
[4] The xx — Jamie xx Edits, The xx公式Bandcamp。発売日2013年4月22日、2曲。1曲目の表示は6:17。
[5] Gregory Adams, "Sunset" (Jamie xx edit) (video), Exclaim!、2013年7月10日。ビデオの紹介。
[6] Olivia Poglianich, The XX – Sunset (Jamie XX Edit) [Free Download], Dancing Astronaut、2014年2月3日。無料配布の案内。フェスティバルでの演奏は予告であり、この版が実際にかけられたかは記事から確認できない。