あとから「始まり」と呼ばれた一曲
2013年4月、テイル・オブ・アス(Tale Of Us)の「Another Earth」が出たとき、Resident Advisorのカルロス・ホーソーン(Carlos Hawthorn)はこの曲を、込み入ったところのない幕開けと書いた。古典的で脈打つテクノのグルーヴに、二人らしい鋭いシンセを重ねた曲、という評だ。1 2年あまり後、二人の一人はこの曲を、自分たちの音の転換点として名指しした。
"'Another Earth' on Minus was the start of the more melodic, arpeggiated techno stuff"(Minusから出た「Another Earth」が、よりメロディックで、アルペジオのテクノの始まりだった)2
発売のときに素直なテクノと聴かれた一曲が、なぜあとから始まりと呼ばれたのか。
ディープハウスの時期
テイル・オブ・アスは、ミラノの音楽学校で出会ったカルミネ・コンテ(Carmine Conte)とマッテオ・ミレリ(Matteo Milleri)の二人組で、やがてベルリンへ移った。2015年12月のMixmagの記事でミレリは、最初の時期の自分たちがディープハウスのように鳴っていたことを認め、大きな流れで、先駆者とも見られていたから続けたが、本当に好きなものではなかったと振り返る。コンテは一言、退屈になった、と言った。2013年のRenaissanceのミックスがその時期の終わりで、「Another Earth」が次の始まりだった、というのがミレリの整理だ。ただしそれはベルリンのテクノではない、自分たちはイタリア人だから、と彼は続け、もっと感情的で、劇がある、と笑っている。2
「音楽的で、ミニマル」
「Another Earth」は、Minusからの3曲入り12インチの1曲目として、2013年4月8日に盤、10日に配信で出た。リッチー・ホーティン(Richie Hawtin)の公式チャンネルの告知は、二人にとってMinusからの最初の作品だと紹介し、その音を、音楽的でありミニマルでもあると書いた。3
2015年11月のXLR8Rの記事で、ミレリはもう少し踏み込んだ。自分たちはディープハウスの世界に属していなかった。離れるのは危険だったが、ほかに道はなかった。ドイツのオストグート・トン(Ostgut Ton)の影響を受けたテクノや、Minusが推すよりミニマルな音はあったが、この旋律の側を持つものはなかった。ハーモニーが好きだから、そちらへ行った、という。4
発売時のホーソーンは、三曲目の「Lost City」では感情的なさまよいが少し余計に感じると書きつつ、その感情の側を、すでに二人の持ち味と呼んでいた。1
セットの真ん中で
2015年のフロアでも、この曲にはおおよその置き場所があった。XLR8Rによれば、その年の二人のセットは2時間に絞られ、決まった位置に置く土台の曲が二、三あり、ほかの曲の組み合わせで話の筋を作る。「Another Earth」は、たいていセットの真ん中でかけて客を持ち上げる曲だという。4
同じ年の暮れ、ミレリは、自分たちのいるロマンティックなテクノの流れは飽和点に達し、まもなく自分たちで閉じることになる、とも話していた。2 始まりと呼んだ曲をセットの真ん中に残したまま、二人はその先を語っていた。
同じ2013年に二人がリミックスしたマノ・ル・タフ(Mano Le Tough)の原曲は、「Primative People」のエッセイにある。4
出典・注
[1] Carlos Hawthorn, Tale Of Us - Another Earth EP, Resident Advisor、2013年4月23日。3曲入り盤全体の評。「Another Earth」と「Lost City」への言及。
[2] David Pollock, DJs of the Year: Tale Of Us, Mixmag、2015年12月18日。二人の経歴とミレリの回想。直接引用はここから。
[3] Richie Hawtin, [MINUSmin2] Tale Of Us - Another Earth (Official Audio), YouTube、2013年4月8日。動画の説明文(レーベルの紹介文と発売情報)。カタログ番号MINUSmin2、発売日、曲目。
[4] William Ralston, Interview: Tale Of Us, XLR8R、2015年11月25日。2013年の転換についての回想と、2015年のセットの組み方。