仕上がる前に、舞台で鳴っていた曲
2019年7月9日、英国のレーベルTru Thoughtsは、クアンティック(Quantic)ことウィル・ホランド(Will Holland)のアルバム『Atlantic Oscillations』から、「September Blues」をシングルとして出した。紹介文に添えたホランドの言葉によれば、この曲はライブを重ねるなかで生まれたという。
"before I'd finished it we started playing around with it onstage"(仕上がる前から、舞台であれこれ試していた)1
毎日ツアーで演奏していると手を入れたくなり、曲の本当の性質が見えてくる、とも話す。レーベルの紹介文は、この曲のもとになったのは、彼にとって初めての長い米国ツアーの暗く物思いに沈む夜だと書いている。1
ブルックリンの盤
2019年6月20日、Rolling Stoneのイライアス・レイト(Elias Leight)は、ホランドを2001年にデビューし、DJとしても制作者としても活動する人と紹介した。Tru Thoughtsの共同創設者ロバート・ルイス(Robert Luis)が、20年近く彼の音楽を出してきたという。2 翌日に出たアルバムの公式Bandcampの紹介文によれば、これは主名義の単独作としては2014年以来の盤で、そのあいだに彼はブルックリンへ移り、スタジオSelvaを作り、クラブGood Roomで隔月のレジデンシーを持った。盤の多くはそこで試されたという。ホランドは、Abletonで作った電子音のスケッチから始めたが、新しいスタジオではすべてを生の演奏者と録れると気づいた、と話している。3 この曲は3曲目、5分5秒だ。3
レイトは、盤には彼のDJの仕事を映すクラブ音楽の流れがあると書く。ディスコはかつて全部生演奏だった、というホランドの言葉とともに、これまでのようにプログラムせず、生のドラマーを入れたことを伝え、その重い拍が盤の序盤の「September Blues」と表題曲に現れ、弦が走るディスコのビートを包むと評した。2 ホランドの2023年の共作は「Get In The Ride」のエッセイにある。
二つの評と、短い版
PopMattersのエイドリアン・ポンテコルヴォ(Adriane Pontecorvo)は、この曲を純粋なインストゥルメンタルのエレクトロファンクと呼び、きらめく鍵盤とディスコの弦、込み入ったリズムが、往年のソウルへの長い目配せになっていると書いた。4 EARMILKのエヴァン・クランデル(Evan Crandell)は、DJセットが自然に盛り上がっていくように、この曲がグルーヴを保ちながら、後に続く盤の中心の曲を予告する、耳に残る和声を聴かせると評した。5
7月のシングルには、アルバムと同じ5分5秒の版に続いて、3分55秒の「Selva Re-edit」と、「You Used To Love Me」のSelvaリミックスが入った。どちらもホランドがブルックリンのSelvaで作ったと紹介文は書く。1 舞台で形を探した曲は、自分のスタジオで1分以上短い版にも組み直された。
出典・注
[1] September Blues, Quantic公式Bandcamp(Tru Thoughts)。released July 9, 2019、3曲の曲目と長さ(05:05、Selva Re-edit 03:55、You Used To Love Me (Selva Remix) 03:49)、紹介文(ホランドの言葉を含むレーベルの宣伝文、直接引用はここから)。同じ紹介文と発売日はTru Thoughts公式にもある。
[2] Elias Leight, Quantic Is a One-Man Music Factory, Rolling Stone、2019年6月20日。ホランドとルイスの紹介、生ドラムについての本人の言葉、「September Blues」と表題曲のビートの記述(記者の地の文)。
[3] Atlantic Oscillations, Quantic公式Bandcamp(Tru Thoughts)。released June 21, 2019、曲目と長さ(3曲目 05:05)、紹介文(ブルックリンへの移住、Selva、Good Room、生演奏についての本人の言葉)。
[4] Adriane Pontecorvo, Producer Quantic Puts His Musical Wanderlust Center Stage on New Solo Release 'Atlantic Oscillations', PopMatters、2019年6月27日。盤の評のうち「September Blues」の記述。
[5] Evan Crandell, Quantic – Atlantic Oscillations, EARMILK、2019年6月21日(ページの公開日データ、25日に更新)。盤の評のうち「September Blues」の記述。