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2019年11月12日 追加

Kingdom Come

The Souljazz Orchestra / Inner Fire ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

生の楽器だけで踊らせる

2024年3月に公開された対話で、ヴィブラフォンの前に座ったピエール・クレティアン(Pierre Chrétien)は、聞き手のリア・ローズマン(Leah Roseman)に曲を一つ選ぶよう促され、2006年のヒット「Mr. President」は演奏し尽くしたと退けて、「Kingdom Come」を挙げた。このヴィブラフォンが前に出る曲だから、と彼は言い、曲の入った盤は全編が生の楽器だったと続けた。1 カナダ・オタワのザ・ソウルジャズ・オーケストラ(The Souljazz Orchestra)は、彼が中心となって曲を書くバンドで2、本人によれば、最初はアフロビートと重いダンス音楽で知られていた。そのうえで彼が考えたのは、こういうことだったという。

"it'd be really interesting to do dance music, but with only acoustic instruments"(生の楽器だけでダンス音楽をやったら、とても面白いだろう)1

盤の編成はコントラバスにヴィブラフォン、トランペット、トロンボーンといったもので、この曲ではハープも自分で弾いた、と彼は付け加えた。この盤のハープは、『Rising Sun』で使ったペダル・ハープより安価なレバー・ハープだったという。1

2014年の盤の最初の本編

曲は2014年にStrutから出たアルバム『Inner Fire』に、4分12秒で入っている。34 公式Bandcampのレーベルの紹介文は、バンドが自分たちのアナログ機材のスタジオに入って作った盤で、アフロ・ジャズの足踏みするような曲、ハイライフ、キューバのボレロ、サルサが一枚に溶け合うと書く。3 宣伝文だ。

PopMattersのブレント・フォークナー(Brent Faulkner)は2014年4月18日の評で、短い導入曲に続く最初の本編としてこの曲を取り上げた。短調を保ったまま、暗い気分を電気が走るようなグルーヴで示すと書き、バリトンサックスのレイ・マレー(Ray Murray)、トランペットのエド・リスター(Ed Lister)、ヴィブラフォンのクレティアンの短いソロを挙げ、繰り返されるピアノとヴィブラフォンのリフは癖になると評した。4

エチオピアとメキシコのあいだ

同じ年、Cairo360のアハメド・エル・ダハン(Ahmed El Dahan)は、この曲にエチオピアの音楽、なかでもジャズのムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)からの影響を聴いた。主題を吹くホーンはメキシコのマリアッチの響きで、バリトンサックスは東アフリカ風のソロでクラリネットと聞き違えそうだと書き、ときおり弾かれるハープが東方の気配を添えると評した。2 十年後にクレティアンが自分で弾いたと話したハープを、2014年の評者はこの曲の彩りとして聴いていた。

ローズマンとの同じ対話で、クレティアンは、2013年ごろから加わっていた別のグループの曲「Blue Nile」のベースラインは、ソウルジャズ・オーケストラの公演でエチオピアのジャズ曲の上で即興していたときに浮かんだと話している。エチオピアの旋法ティジタ(Tizita)の短調に基づき、2016年のアトランティス・ジャズ・アンサンブル(Atlantis Jazz Ensemble)の盤『Oceanic Suite』に入っている。1 2014年の評者がこの曲に聴いたエチオピアは、クレティアン自身の話では、同じバンドの舞台の即興を経て、別のグループの曲に形を取っている。

出典・注

[1] Leah Roseman, Interview with Pierre Chrétien of the Souljazz Orchestra and Atlantis Jazz Ensemble, leahroseman.com(Conversations with Musicians)、2024年3月16日(ページのdatePublished)。対話の書き起こし。「Kingdom Come」を選んだ理由(L183。「all acoustic album」は盤についての言葉。直接引用はここから)、この曲でのハープ(L187「I play harp on it as well」)、アトランティス・ジャズ・アンサンブルの始まり(L204、2013年ごろ、ソウルジャズ・オーケストラのザカリ・フランツ Zakari Frantz に誘われた)、「Blue Nile」と『Oceanic Suite』はクレティアンの言葉。

[2] Ahmed El Dahan, The Souljazz Orchestra: Inner Fire, Cairo360、2014年(ページの日付表示は04/03/2014で、日と月の順は明記されていない)。バンドの紹介と「Kingdom Come」の評(評者の記述)。

[3] Inner Fire, The Souljazz Orchestra公式Bandcamp。曲目と長さ(Kingdom Come 04:12)、レーベルの紹介文(宣伝文)。発売日の表示はreleased January 1, 2014で、Strutの販売頁には3 January, 2014と1 January, 2014の二つの表示がある。

[4] Brent Faulkner, The Souljazz Orchestra: Inner Fire, PopMatters、2014年4月18日。見出し欄の発売日は2014-02-25、レーベルStrut。「Kingdom Come」の評とソロの奏者名(評者の記述)。

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