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2020年3月1日 追加

Okudu

Maajo / Tropic of Tulli ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

稽古場の即興と、1920年代のロンドンの声

フィンランドのタンペレを拠点にするマーヨ(Maajo)の盤『Tropic of Tulli』には、成り立ちが両端にあるような二曲が入っている。5曲目の「Okudu」について、作り手はRansom Noteの曲ごとの解説でこう書き出した。

"This song was born of a necessity."(この曲は必要から生まれた)1

稽古場から、楽団へ

作り手によれば、先にハーマン・プライム(Herman Prime)名義で出た12インチ「Maajo」の発売に合わせて友人を集め、伴奏の楽団のようなものを作ったが、演奏する曲が足りなかった。「Okudu」はそのために、リハーサルでのジャム・セッションから生まれた一曲だった。運よくテープに残していたところへ、解説の時点でのレーベルQueen Nannyの長、ジェイミー・ラッセル(Jamie Russell)が新しい曲を求めてきたので、送る曲があった。ラッセルがこの曲を気に入り、もっと曲をという彼の求めのせいで、楽団は事実上できあがったのだという。1

作り手は、この曲を盤でいちばんアフロビートに近いと呼び、その理由を二つ挙げる。ブアリ(Buari)の「Advice from Father」の流儀のベースラインと、自分の安い80年代のハモンドの鍵盤の和音だ。鍵盤は蚤の市で見つけ、盤のほとんどの曲で使ったが、とても重いのでライブには持ち出せない、と付け加えている。1 公式Bandcampでの長さは5分42秒。2 盤の成り立ちと4曲目については「Musa Paradisa」のエッセイがある。

輸出のための録音から、クラブの一曲へ

同じ解説で作り手は、7曲目の「Kofi Obu」を、1920年代に録られたベン・シモンズ(Ben Simmons)の歌の旋律を土台にした沈んだ曲が、砂漠を思わせるギターのリフとシンセのアルペジオで思わぬ味を帯び、盤でいちばんクラブ向けの曲になったと振り返る。終わりの盛り上がりは、盤でもっとも凝縮された瞬間かもしれないという。1 公式Bandcampでの長さは7分3秒だ。2

声の出どころとして作り手が挙げたHonest Jon'sの編集盤『Living Is Hard: West African Music In Britain, 1927-1929』は2008年に出た。その紹介によれば、収められた録音はロンドンで作られ、1927年末から三年にわたってZonophoneのレーベルから出た。レコードはすべて西アフリカへ送られ、残ったものはわずかだという。シモンズは、ガーナのソルトポンドの出身とされ、録音契約に記された唯一の住所は、彼の一団の一人ダニエル・アクアー(Daniel Acquaah)の、リヴァプールの港に近い通りのものだった。紹介は、1928年から29年のセッションのシモンズの3曲を、ファンティの文化の奥に根を張ったアフリカのナショナリズムの表れと読んでいる(ただし紹介は、シモンズの無題の一曲はZonophoneが出さなかったと書く)。3 編集盤でのシモンズの曲の題は「Untitled」「Mu Kun Sebor Wa Wu」「Obu Kofi」で、11曲目の「Obu Kofi」は3分4秒。4 作り手は、どの録音の声かを名指していない。

ロンドンで録られ、西アフリカへ送られて多くが失われたレコードの時代の声が、2008年の復刻を経て、稽古場から生まれたフィンランドの楽団の盤で、もっともクラブ向けの曲の土台になっている。

出典・注

[1] Track By Track: Maajo – Tropic Of Tulli, Ransom Note。頁の本文に日付・署名の表示はない(メタデータの2021年8月20日は再掲か移設の日付とみられる。2016年11月6日のWayback Machine保存版に本文が既にある)。曲ごとの解説は作り手の一人称。「Okudu」の項(直接引用はここから)と「Kofi Obu」の項。

[2] Tropic of Tulli, Maajo公式Bandcamp。曲目と長さ(5曲目 Okudu 05:42、7曲目 Kofi Obu 07:03)、所在地 Tampere, Finland。released October 16, 2016。

[3] Living Is Hard - West African Music In Britain, 1927-1929, Honest Jon's Records(販売ページの紹介文。レーベル側の文)。ロンドンでの録音とZonophone、西アフリカへの輸出、シモンズの出身地(Kwame Asareについての文の中の「like Ben Simmons」)、アクアーの住所、1928〜29年のセッションの3曲についての読みと、無題の一曲をZonophoneが出さなかったこと。

[4] Living Is Hard (West African Music In Britain, 1927-1929), Honest Jon's Records公式Bandcamp。released June 3, 2008、曲目と長さ(3曲目 Untitled、5曲目 Mu Kun Sebor Wa Wu、11曲目 Obu Kofi 03:04)。

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