My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2021年8月25日 追加

Insurrection (Remastered)

The Souljazz Orchestra / Freedom No Go Die (Remastered) ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

2007年の評が聴いたクラヴィネット

2007年2月20日、Exclaim!のマット・バウアー(Matt Bauer)は、オタワの楽団ザ・ソウルジャズ・オーケストラ(The Souljazz Orchestra)の2枚目『Freedom No Go Die』を、フェラ・クティ(Fela Kuti)の精神が生きている盤だと評した。「Mr. President」(評の表記。のちの曲目では「Mista President」)などの題が政治を前に出す一方で、グルーヴを打ち込んでくるのは「Insurrection」のようなミッドテンポの器楽曲だという。彼が挙げたのは、ピエール・クレティアン(Pierre Chretien)の沸き立つようなクラヴィネットと重いベース、フィリップ・ラフルニエール(Phillipe Lafreniere)のコンガと急き立てる打楽器だった。1

題の「Remastered」

Appleの配信で、この曲は「Insurrection (Remastered)」、盤は『Freedom No Go Die (Remastered)』と表示される。その盤の権利表示は「℗ 2007 The Souljazz Orchestra」、日付は2007年2月13日で、リマスターの年や担当は表示のどこにも書かれていない。2 公式Bandcampは同じ盤を「Remastered」の語なしで載せ、2007年2月13日発売、9曲の3曲目、3分39秒と表示する。Appleでも3曲目、3分39秒で、曲順と長さは一致する。23 公式サイトは、この盤を楽団の2枚目のアルバムと紹介し、アフロビートを軸にスークース、サルサ、ファンク、フリー・ジャズを交えたと書く。4

2022年、カナダのレーベルDo Right! Musicは20周年を記念して、長く廃盤だったこの盤を、1枚だったLPから140グラムの2枚組に広げて出し直した。初回は橙色の盤で500枚。レーベルの紹介文(宣伝文)が名を挙げたのは、出世作の「Mista President」と、初めてアナログ盤に入る、ファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)とレオン・トーマス(Leon Thomas)の「The Creator Has a Master Plan」のカバーだった。5 その2枚組で、「Insurrection」はB面の1曲目に置かれた。3

クラヴィネットという楽器

楽団を率いるクレティアンは、2024年に公開されたリア・ローズマン(Leah Roseman)との対話で、この鍵盤を説明している。「Insurrection」の録音に触れた話ではない。もとはバロック時代のクラヴィコードに電気の増幅を付けた楽器で、音がとても小さいため増幅するのは理にかなう。バロック音楽のための楽器だったが、ジャズやファンクの奏者が手にして、ワウ・ペダルを通すとギターのように鳴ると気づいた、と。6 古い鍵盤の多くは、まだあまり求められていなかった90年代に安く手に入れたといい、こう続けた。

"I had to learn how to fix everything myself."(全部、自分で直せるようにならなければならなかった)6

同じ対話の別の場面は「Kingdom Come」のエッセイにある。2007年の評者がこの曲の推進力に挙げた鍵盤を、弾いた本人は、いまでは町でローズやクラヴィネットの修理を頼まれる一人だと話している。6

出典・注

[1] Matt Bauer, The Souljazz Orchestra: Freedom No Go Die, Exclaim!、2007年2月20日。盤の評(評者の記述。オタワ、2枚目〔sophomore disc〕、「Insurrection」の項)。人名の綴りは記事の表記(Chretien、Phillipe Lafreniere)。

[2] iTunes Lookup: Freedom No Go Die (Remastered), Apple。盤の日付2007-02-13、℗ 2007 The Souljazz Orchestra、9曲。3曲目「Insurrection (Remastered)」219,425ミリ秒。曲ごとの日付欄は多くが2006-01-01と表示される(6曲目だけ2007-02-13)。リマスターの年や担当の表示はない。

[3] Freedom No Go Die, The Souljazz Orchestra公式Bandcamp(ページ上部にDo Right Musicの表示)。released February 13, 2007、9曲の曲目と長さ(3. Insurrection 03:39)、「Do Right 20 Edition - Double Vinyl」の欄(500 copies worldwide、140g 2xLP、曲目 B1. Insurrection)。この版は「Sold Out」と表示されている。

[4] Records, The Souljazz Orchestra公式サイト。『Freedom No Go Die』(Do Right! Music, 2007)の紹介(2枚目のアルバム、ジャンルの要素)。日付の表示なし。

[5] The Souljazz Orchestra - Freedom No Go Die (Do Right 20 Edition), Horizons Music(販売店のページに載るレーベルの紹介文)。20周年、2枚組への拡大、初回500枚、「Mista President」とカバー曲の記述。販売店の表示する発売日は2022年6月10日だが、別の販売店Phonica Recordsは入荷予定を2022年7月29日としており、本文では年だけ書いた。

[6] Leah Roseman, Interview with Pierre Chrétien of the Souljazz Orchestra and Atlantis Jazz Ensemble, leahroseman.com(Conversations with Musicians)、2024年3月16日。対話の書き起こし。L130 クラヴィネットの説明、L134 90年代の入手と修理(直接引用はここから)。書き起こしには聞き取りの崩れ(「git touristic」「Wawa pedal」「roads and clavet」)があり、ギターのような音、ワウ・ペダル、ローズとクラヴィネットと読んだ。

← この曲のページへ