誰もが書いた8ビットが、一曲にだけ残っていた
2015年5月4日、フランスの雑誌Gonzaïでフラヴィアン・ベルジェ(Flavien Berger)の最初のアルバム『Léviathan』を評したバンジャマン・ボリス(Benjamin Boris)は、括弧書きを添えてこう書いた。どの記者も好んで、彼が8ビットの音を汲んでいると言う。たぶんプレスリリースに書いてあったのだろう。だが実際には、それが聴けるのは「Bleu sous-marin」だけだ、と。1
盤の七曲目
Appleの表示では、『Léviathan』は2015年4月20日、℗ 2015 Pan European Recordingの10曲入り。「Bleu sous-marin」は7曲目で6分48秒、盤を閉じる表題曲は15分48秒ある。2 ボリスは、前年に二枚のEPを出していた作り手が、同じPan Europeanから二枚組LPの長さで出した盤として紹介している。1 そのうちの一枚、『Mars Balnéaire』の表題曲は「Mars balnéaire」のエッセイで読める。
始まりの音
8ビットとは、ゲーム機の音源チップで作られる音のことで、そう説明したのは6月15日に同じ盤を評したBenzineのジュリアン・アダン(Julien Adans)だ。アダンは、ベルジェが独学の音楽家で、ゲーム機をいじめるようにして奇妙な音を引き出すことから音楽を始めたらしい、と伝聞の形で紹介する。そして「Bleu sous-marin」で、彼はその始まりに立ち返り、8ビットでけだるいエレクトロ・ブルースを聴かせると書いた。3
ボリスも、ベルジェがゲーム機をいじることから実験を始めたのは確かだと認める。そのうえで、この盤での機械との付き合い方はまったく別だという。古い電気オルガンに付いた、すぐそれと分かる安っぽいリズムボックスを手探りしている様子が見て取れ、新しいボタンを押すたびに新しい歌を一つ書いたかのようだ、とボリスは書く。「Vendredi」ではボサの設定を、「Rue de la victoire」ではスローの設定を試している、と例も挙げている。1
二人の評を並べると、盤の中での「Bleu sous-marin」の位置が見えてくる。ボタンを押すたびに一曲書いたようだとボリスが評した盤で、この曲だけが、作り手が音楽を始めた頃の、ゲーム機の音を抱えている。これは二つの評を重ねた書き手の読みである。
冒険の旅
アダンがけだるいブルースと呼んだその8ビットの曲を、ボリスは、ゲームボーイでいちばん壮大な冒険の旅に添えて聴きたかった、と書いた。1
出典・注
[1] Benjamin Boris, Flavien Berger – Leviathan, Gonzaï、2015年5月4日。盤の評(評者の記述)。8ビットを記者たちが繰り返すことと、プレスリリース由来だろうという推測、「Bleu sous-marin」だけに聴けるという指摘とゲームボーイの冒険のたとえ、ゲーム機から始めたこと、オルガンのリズムボックスの例(Vendredi、Rue de la victoire)、前年の二枚のEPと二枚組LP。
[2] iTunes Lookup: Léviathan, Apple(フランスのストア)。2015-04-20、℗ 2015 Pan European Recording、10曲、7曲目 Bleu sous-marin 407,973ミリ秒、10曲目 Léviathan 947,800ミリ秒。
[3] Julien Adans, Flavien Berger – Léviathan, Benzine Magazine、2015年6月15日。盤の評(評者の記述)。ゲーム機から音楽を始めたという話は評者が条件法(伝聞)で書いている。8ビットの説明、「Bleu sous-marin」についての一文。評者が歌詞や主題に触れた部分は使っていない。