安いほうの一台から出たライン
2014年9月、Attack Magazineの連載「My Studio」で、サンパウロに住むプロデューサーのギ・ボラット(Gui Boratto)は、自宅スタジオの機材を一つずつ紹介した。1記事の前書きによれば、そこは当時の新作『Abaporu』を作った場所だという。1ボラットがリワークした曲は、別の稿「Mutante - Gui Boratto Rework」で扱った。
見出しを立てて最初に紹介されるのはEMS VCS3だ。『Dark Side Of The Moon』でピンク・フロイドが使った機種で、ボラットは俳優ヴィンセント・ギャロから買ったと書き、かなり高価だとも書いている。1その次に出てくるのが、Sequential CircuitsのSix Trakだ。ボラットはこれを、とても安いがなかなかいい小さなシンセだと紹介し、こう続ける。
"The main ‘Azzurra synth lines were made by this baby."(「Azzurra」の主なシンセのラインは、こいつで作った)1
ドラムの電子音にも使ったことがあり、クラフトワークのいくつかの音を思い出させる、とも書いている。1高価な一台に続いて、5年前の曲の主なラインの出どころとして名が挙がったのは、安価なほうの一台だった。記事が「Azzurra」について語るのはこの一行だけで、曲の作り方の細部には触れていない。
盤と、その後の版
Appleのデータでは、「Azzurra」はアルバム『Take My Breath Away』の11曲中6曲目で、長さは約4分58秒、日付欄は2009年3月。2同じデータには、翌2010年2月の日付で『Azzurra - EP』という3曲入りの盤もあり、1曲目は「Azzurra (It´s Not the Same Version)」約5分26秒、ほかに「The Glam」と「Telecaster」が入っている。2アルバムの一曲の名を題にし、副題つきの版を先頭に置いた3曲入りの盤が、翌年の日付で並んでいることになる。
アルバムが出た2009年、PopMattersのアラン・ランタ(Alan Ranta)は、前作『Chromophobia』と比べて、どの曲も滑らかで力強く、肉付けが厚くなったと評した。3これは盤全体への評で、「Azzurra」の名は出てこない。同じ年のDrowned in Soundのクリス・パワー(Chris Power)の評も、この曲には触れていない。4ここで読めた資料のうち、曲そのものに触れているのは、5年後に作り手が機材紹介のなかで書き添えた、あの一行だけだ。
出典・注
[1] Gui Boratto, Attack Magazine(連載「My Studio」)、2014年9月30日(ページの表示日)。前書きL66、EMS VCS3はL70–73、Six TrakはL75–76(直接引用はL76)。本文はボラットの一人称の説明文。著者名の表示なし。
[2] iTunes Search: gui boratto azzurra, Apple(米国)。『Take My Breath Away』6/11曲「Azzurra」298,440ミリ秒、日付欄2009-03-09。『Azzurra - EP』1/3曲「Azzurra (It´s Not the Same Version)」326,327ミリ秒、2/3曲「The Glam」、3/3曲「Telecaster」、日付欄2010-02-08。EPの版とアルバムの版の関係(録音の異同)は確かめていない。
[3] Alan Ranta, Gui Boratto: Take My Breath Away, PopMatters、2009年4月7日。L40–44(盤全体の評。曲名の言及なし)。
[4] Chris Power, Album Review: Gui Boratto - Take My Breath Away, Drowned in Sound、2009年2月26日。L34–68を通読し、「Azzurra」への言及がないことを確認した。