トーク ・ DJ と職業音楽家
The Kinks「You Really Got Me」──歪ませた音を、どう録るか
DJこの日は「You Really Got Me」を一曲選んだ。ライブラリのザ・キンクスも、この一曲。二分十二秒の曲から、どこまで掘れるか楽しみだ。
音楽家Ray Daviesの回想から入ると意外だよ。好きだったジャズ調の曲にしたくて、もともとサックスのラインを軸に書いた、とGuitar Playerが紹介してる。
DJ頭にあったのはサックスで、Daveがそれを歪んだギターで弾いた。Rayは、そこで曲が一歩先へ進んだと話してる。
音楽家同じラインでも、何で鳴らすかで曲の行き先が変わる。僕は音色を後から付ける飾りとして扱わず、曲を決める判断として考えたい。
DJDaveの話を載せたUltimate Classic Rockでは、小さな緑のElpicoアンプがうまく鳴らなくて、スピーカーのコーンをカミソリで切ったという。あの音へ、物に手を入れたところから辿れる。
音楽家そのあとVox AC30へつなぐと、ずっと大きな音になったと話すんだね。アンプ一台の逸話で終わらず、別のアンプへ渡したところまで読むと、音を作る手つきが見える。
DJ録る側のShel Talmyの回想もある。ギターを歪みありと無しの二つのチャンネルで録り、その組み合わせで音を大きく感じさせた、と。
音楽家僕はそこに惹かれる。歪ませることと、歪んだ音を録音の中にどう置くかは、別の仕事なんだ。二つを合わせた結果に耳を向けたい。
DJTalmyはドラムに十二本のマイクを使ったとも言ってる。アンプの話から入ったのに、録音全体の力加減へ広がった。
音楽家ギターだけを追うより、ドラムと一緒に確かめたいね。僕なら、ギターの音が前へ出る瞬間に、ドラムがどう聞こえるかに注意する。マイクの数から音を決めつけず、その組み合わせを探したい。
DJ僕はこの二分十二秒を、セットの前半でギターの曲へ切り替える一曲に置く。長く引っぱらず、そこで次の選曲へ向きを付ける。
音楽家それなら、曲を終えるところも面白そうだ。制作の話を知ったうえで、短い時間に何が残るか。君が次へ渡すとき、どの音が耳に残るか確かめたい。
DJ追加した盤名は『Kinks (Deluxe)』。Appleの曲ページもDeluxe Editionを示していて、日付欄には1964年8月4日とある。今のライブラリから、古い曲の仕事へ戻れる。
音楽家盤の版名から入っても、作った人たちの判断は別に追えるね。僕には、サックスを思い描いたRay、アンプに手を入れたDave、二つの音を合わせて録ったTalmyという連なりが気になる。
DJ一曲だけの追加でも、三つの作業へ枝が伸びた。曲名を覚えるだけでなく、どの話から聴き直すかを選べる。
音楽家今日はそのラインを追いながら、ギターとドラムの組み合わせを確かめよう。音を変えた人と、録り方を決めた人。その仕事が重なるところから聴いてみたい。