一人のファンの日々と、閉じる日のフロア
2023年5月1日、ロンドンのPrintworksは最後の一日を迎えた。使われなくなった新聞の印刷工場を2017年からクラブにしてきた場所で、4月28日から4日続いた閉館の催しの最終日は売り切れた。1 Mixmagが4月に伝えた出演者の発表では、この最後の回の筆頭がペギー・グー(Peggy Gou)で、ロイシン・マーフィー(Róisín Murphy)やディクソン(Dixon)と並んでフォラモール(Folamour)の名があった。建物はこの後、事務所に改装される予定だった。2 当日を取材したNMEのベン・ジョリー(Ben Jolley)は、その日の出番をいくつも描いたあと、バイセップ(Bicep)の出番の前、画面の文字が並び替わって「See You In 2026 – Printworks 2.0」と現れ、場内が歓声に包まれた様子を書いている。1
ほどなく、フランスのDJ、プロデューサーのフォラモールは「Poundland Anthem」の映像を出した(紹介の掲載は6月初め)。配信紹介サイトFindYourSoundsの紹介では、ある一人のファンの日々を繊細にのぞき見る作りで、クラブの文化と、パーティーと音楽を通した自由に捧げたものだという。そこに、Printworksの閉館の日の彼のセットの実写が入っている。3
アルバムの3曲目
曲は5月26日に出たアルバム『Manifesto』の3曲目で、長さは5分55秒。45 Mixmagによれば、アルバムは2年がかりの仕事で、地元マルセイユとアムステルダムのWisseloordスタジオで録られ、3月のDGTLフェスティバルでのセットの最中に発表された。4 本人はアルバムにこう言葉を添えている。
"This is a manifesto of my love for a free humanity, of my affection for these sparks that are born from our frictions."(これは、自由な人間への私の愛の、ぶつかり合いから生まれる火花への私の親しみの、宣言だ)4
EDM Identityで評を書いたエミリー・ピーターズ(Emily Peters)は、この曲をアルバムのフォーカス・トラック(売り出しの軸の曲)として知られる曲と紹介し、響き渡るシンセに洒落たリズムが加わってトランペットが曲を満たし、ディスコの時代に連れ戻すと書いた。アルバムの要素を一通り味わわせる曲だ、とも。6
夏のセットの中で
投稿型の曲目表MixesDBを見ると、この曲はその夏のフォラモールのセットに入っている。7月10日付の、ジュネーヴのサン・ピエール大聖堂でのCercleのセットでは、始まって45分ほどのところで「Poundland Anthem」が鳴り、「Voyage」も前半に入っている。締めはアルバムの最後の曲「When A Piano Saves The Day」だった。7 5日後の7月15日、オーストラリアのラジオ局Triple JのMix Upに寄せたミックスでも、「Poundland Anthem」が入り、最後は同じ「When A Piano Saves The Day」で閉じている。8
一人のファンの日々を追う映像に、閉じる日のクラブの実写を差し込んだ。その曲は、夏には大聖堂でのセットの中ほどで鳴っていた。同じアルバムの「Freedom」には、ホーンを録った部屋の話がある。
出典・注
[1] Ben Jolley, Printworks' massive closing party was a farewell to a capital favourite… for now, NME、2023年5月4日。2017年の開業と元の用途、4日続いた閉館の催し、最終日が売り切れたこと、最後の告知の場面に使った。記事はフォラモールの出番には触れていない。
[2] Becky Buckle, Printworks announce line-ups for final parties, Mixmag、2023年4月6日。最後の回の出演者の発表と、改装の予定に使った。発表の記事で、当日の演奏の報告ではない。
[3] findyoursounds, Folamour 'Poundland Anthem' (Official Video), FindYourSounds、2023年6月(ページに6月2日と4日の表示)。映像の紹介文に使った。宣伝文とみられる。文中で閉館を「earlier this month」(今月初め)としているが、閉館は5月1日で掲載は6月なので、5月に書かれた文の転載の可能性がある。映像の中のセットで「Poundland Anthem」がかかったかどうかは、この紹介からは分からない。
[4] Becky Buckle, Folamour releases new album 'Manifesto', Mixmag、2023年5月26日。アルバムの発売、制作期間、録音の場所、発表の場、本人の言葉と曲順に使った。本人の言葉は記事中の引用。記事は14曲としている。拠点は資料で異なる(FindYourSounds 2023年4月28日はリヨン)。
[5] iTunes Lookup: Poundland Anthem, Apple(米国)。『Manifesto』3曲目、355,219ミリ秒、日付欄2023-05-26。後の版(15曲の掲載)でも3曲目で同じ長さ。
[6] Emily Peters, Folamour Digs Into World Influences on 'Manifesto', EDM Identity、2023年5月27日。アルバム評の中の、この曲についての記述に使った。
[7] 2023-07-10 - Folamour @ Cercle, Cathédrale Saint-Pierre, Geneva, Switzerland, MixesDB。曲の位置([45]分)と前後、最後の曲に使った。利用者が書き込む曲目表で、頁は「complete」と表示している。録音は1時間53分42秒で、最後に取材の部分が付く。
[8] 2023-07-15 - Folamour - Triple J Mix Up, MixesDB。ミックスの曲目に使った。利用者が書き込む曲目表で、頁は「complete」と表示している。