My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2023年7月10日 追加

Once I Had A Love (AKA The Disco Song) - 1975 Version / Remastered 2001

Blondie / Plastic Letters ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 2 分

フックはあっても、曲はまだ変わる

同じ曲を何度も演奏し直すとき、何を保ち、何を変えるのか。ブロンディの1975年版「Once I Had A Love」は、のちの「Heart of Glass」になる曲だ。1 二つを比べるときには、後のヒット曲へ近づいたかどうかに加えて、曲の魅力を演奏の中でどう働かせるか、という問いも立てられる。

目指す音に、名前が先にあった

クリス・シュタイン(Chris Stein)は、正式な題名がなく「The Disco Song」と呼んでいた頃、バラードやレゲエとしても試したと回想する。気に入っていたのは、同じ和音のところで長調から短調へ向きを変えるフックだった。それでも、演奏はしっくりこなかったという。1

フックとは、耳に残り、曲を思い出す手掛かりになる仕掛けのことだ。シュタインが語るのは長調から短調へ向きが変わる箇所であり、目立つ音型に限った話ではない。

音を考え出すことと、その音が働く組み合わせを探すこと。作曲したものを演奏にする過程には、この二つの判断がある。「ディスコ」という仮の名前も、完成した様式の証明というより、目指す方向の印として読める。目的地の名前を知っていることと、そこへ着く方法を知っていることには、距離がある。

ドラムが探していた動き

クレム・バークは、シャーリー・アンド・カンパニーの「Shame Shame Shame」のようなダンス曲を模そうとしていたと話す。ただし、バスドラムを四分音符で一定に打つより、リズムを動かしていたという。1

参考にする音楽を選んでも、演奏の答えが一つに決まるわけではない。曲の魅力をどこに見いだすかと、身体を動かすリズムをどう作るかには、それぞれの奏者の判断がある。ダンス曲という呼び名の中にも、音を置く方法の幅がある。

配信の曲目表に残る、別の制作時期

Numero Groupの回顧記事によれば、1975年6月の録音はアラン・ベトロックが、ロングアイランドの母親の家の地下室で制作した。1977年までに「Once I Had A Love」と呼ばれ、後の録音で「Heart of Glass」へ改題される。1

現在のQobuzでは、この1975年版が『Plastic Letters』の曲目に「Remastered 2001」という表記とともに載っている。2 録音とリマスターは別の時点であり、同じアルバムの下に並んでいても、すべてが同じ制作時期の録音とは限らない。

初期の録音を後のヒット曲の未完成版としてだけ捉えると、変わる前に何を残そうとしていたかを見落としやすい。録音を比べる楽しみには、よくなった箇所を探すことに加えて、異なる選択が成り立つことを知る面もある。一曲の履歴は、正解へ向かう一本道よりも、奏者たちが試した方法の重なりとして読める。

出典・注

[1] Amy Rose Spiegel & Ken Shipley, “Blondie: Once I Had A Love”, Numero Group。本人回想と録音・改題の履歴を参照。冒頭の「Date Published: 01.31.15」と末尾の「July 2018」が併存しており、公開年月を一つに確定していない。

[2] 『Plastic Letters』, Qobuz、曲目14の版表記を参照。1975年版と後の「Heart of Glass」は別録音として扱う。

← この曲のページへ