My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2024年5月7日 追加

Kimbara

Barry Can't Swim / Kimbara ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 2 分

1974年の一曲目の、五十年後

1974年、ファニアを興した一人でドミニカ生まれのジョニー・パチェコ(Johnny Pacheco)は、キューバ出身のセリア・クルス(Celia Cruz)と初めて組んだ盤『Celia & Johnny』を作った。ファニアの旧譜を再発しているCraft Latinoによれば、プロデューサーのパチェコは彼女の声が真ん中に立つように曲と編曲を選んだ。盤はゴールド・ディスクになり、彼女をサルサの女王の座に押し上げた。1

1974年の一曲目

その盤で、彼女の最大級のヒットの一つになったのが、ジュニア・セペダ(Junior Cepeda)の書いた「Quimbara」だった。1 Glide Magazineのジョーイ・ウィリス(Joey Willis)も、盤の一曲目として、セペダの書いたこの曲を挙げている。2

ベネズエラの新聞El Diario de Guayanaのコラムによれば、ファニアの社長ジェリー・マスッチ(Jerry Masucci)は、どのサルサにも出てくる決まり文句が入っていると言って、一度はこの曲を外そうとした。コラムが載せるクルスの言葉では、彼女はこう押し返したという。3

"Le expliqué que 'Químbara' era como si el tambor le estuviera llamando a la tumbadora y al bongó"(「Químbara」は、太鼓がトゥンバドーラとボンゴを呼んでいるようなものなのだと説明した)3

2024年の春

五十年後の2024年4月30日、スコットランド出身のバリー・キャント・スウィム(Barry Can't Swim)がNinja Tuneから「Kimbara」を出した。デビュー・アルバム以来の新曲だった。45 発売を伝えたDorkの記事によれば、コーチェラへの出演や、ボノボ(Bonobo)、サルート(salute)とB2Bで回った北米のDJツアーの直後で、曲は出る前から彼のDJセットでファンのお気に入りになっていた。記事は、この曲がクルスの1974年の録音をサンプルしていると書き、「Quimbara」には直訳がないが「楽しく過ごす」に近い意味だとされる、と添えている。5 Beatportの表示では125 BPM、Eマイナー、ジャンルの欄はHouse。6

同じ年、ファニアは創立60年を迎え、Craft Latinoは10月に『Celia & Johnny』の50周年の再発盤を出した。1 配信サービスQobuzに載る「Kimbara」のクレジットには、作詞者としてジュニア・セペダの名がある。7 半世紀前の盤の一曲目を書いた人の名が、新しいダンス・ミュージックの曲の欄に書き手として残った。同じ作り手が、DJセットでかけていたブラジルの曲をサンプルした話は「Dance of the Crab」にもある。

出典・注

[1] Celebrating 50 Years of Celia & Johnny with a Special Anniversary Vinyl Reissue, Craft Recordings(Craft Latino)。パチェコの紹介(ドミニカ生まれ、ファニアの共同創設者)、作者がセペダであること、パチェコの選曲の考え、ヒットとゴールド、2024年がファニアの60年であること、再発盤(10月11日発売)に使った。再発を売るレーベル自身の告知文。頁に掲載日の表示は読めていない(文中の催しの日付から2024年夏ごろの掲載とみられる)。

[2] Joey Willis, 1974 Masterpiece 'Celia & Johnny' From Celia Cruz and Johnny Pacheco Gets 50th Anniversary Vinyl Reissue (ALBUM REVIEW), Glide Magazine、2024年10月14日。一曲目であることと作者の確認に使った。作者について[1]と別の資料として数えたが、再発の告知文をなぞった言い回しが多い。ウィキペディア「Quimbara」も作者をセペダとし、当時のBillboardでマイアミとニューヨークで1位と書くが、チャートの記述は元の紙面で確かめていないので本文に使っていない。

[3] Redacción EDG, Columna: Orquestas & Soneros, El Diario de Guayana、2024年11月11日。マスッチの反対とクルスの言葉(直接引用はここから。クルスの自伝『Celia. Mi vida』の話の流れの中で載る)に使った。コラムはパチェコのラジオ談と自伝の二つの経緯を並べ、食い違う。一次の録音・書籍では確かめていない。コラムは歌の一節も載せているが使っていない。セペダのその後についての記述も使っていない。

[4] Barry Can't Swim, Kimbara, Bandcamp(本人頁)。発売日、デビュー・アルバム以来の新曲であること、Ninja Tuneに使った。頁の曲目は「Kimbara (Extended Mix)」04:25と「Kimbara」03:09の二つで、ここで扱うのは後者。

[5] Dork, Barry Can't Swim has shared a new single, 'Kimbara', Dork、2024年5月1日。直前の出演とツアー、DJセットで人気だったこと、サンプルと題の意味に使った。記事の書き出しはBandcampの紹介文と同文で、題の意味の説明は記事の「とされる」という言い方による。署名は「Dork」。サンプルがどの録音から取られたかは、盤のクレジットでは確かめていない。WhoSampledの頁のURLはSUNANAの「Quimbara」を指す(頁は読めていない)。

[6] Beatport, Kimbara (Original Mix), 曲のページの表示。BPM・キー・ジャンルに使った。長さ3:09、レーベルNinja Tune、発売4/30/24の表示。

[7] Kimbara – Barry Can't Swim, Qobuz(フランス)、盤のページのクレジット欄。3分9秒の「Kimbara」の欄に「Junior Cepeda, Lyricist」とある。同じ欄には、作曲者・作詞者として別の名も並ぶ。

← この曲のページへ