My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2024年9月1日 追加

Come Find Me

Caribou / Come Find Me ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

誰も知らない曲に、フロアが答えるとき

カリブー(Caribou)ことダン・スナイス(Dan Snaith)には、曲ができあがったかどうかを確かめるやり方がある。DJセットでかけてみることだ。2024年8月28日、新しいアルバム『Honey』の発表と同時に出た「Come Find Me」について、発表の声明で、彼はこう書いている。

"That's always the best litmus test that a track has come together in the right way."(それがいつも、曲がうまくまとまったかどうかのいちばんのリトマス試験になる)1

その前に彼が言うのはこうだ。DJセットでこの曲をかけると、歌だけに落ちたところから、急に曲が押し寄せて戻ってくる。客の誰もまだ聴いたことがないのは確かなのに、いつもひどく感情のこもった、陶酔した反応が返ってくる。同じ声明で、こういうコード進行とフレンチ・タッチ風の空気が好きだが、ちょうどいい声のフックとブレイクダウンを見つけて、もっとポップで簡潔にするまでに長い時間がかかった、とも明かしている。1

別人の声で歌う

Stereogumでこの声明を紹介したトム・ブライハン(Tom Breihan)は、きれいな声のサンプルから拍もメロディーも流れ出てくる、温かくとろけるようなクラブ曲だと書いた。スナイスのクラブ向けの別名義ダフニ(Daphni)で出ていてもおかしくない、とも。1

その声には仕掛けがあった。アルバムでスナイスは、AIで自分の声を別の声に変えることを試している。本人の説明はこうだ。

"I found it impossible to resist trying it, and once I'd tried it, it was impossible to look away."(試さずにはいられなかったし、一度試したら目が離せなくなった)2

評は、その試みそのものには慎重だった。Resident Advisorのレイド・BG(Reid BG)は、AIの声はアルバム全体ではあまり働いていないと見ながら、この曲では高く引き上げられて、無邪気な子どものささやきのように響き、美しいと書いた。アルバムの中ほどに来る、最初の本当の聴きどころだ、とも。3 Exclaim!のディラン・バーナビー(Dylan Barnabe)は、声をAIで変えた曲に眉をひそめる人もいるだろうとしつつ、害は少なく、表現の道具の一つに感じられると書いている。4

アルバムは10月4日に出た。5 Beatportの表示では130 BPM、Aマイナー。6

バンドで鳴らす

同じツアーのトロントの夜は「Volume」の稿に書いた。

2025年1月7日、西オーストラリアのフリーマントル・アーツ・センターの野外。scenestrのギャレス・ブライアント(Gareth Bryant)によれば、「Bowls」と「Odessa」で熱を上げたあと、バンドは『Honey』に戻り、「Come Find Me」を壮大なピアノ・ハウスのジャムとして鳴らした。7

発売の前、この曲は誰も聴いたことのない曲としてDJセットで試されていた。単曲の配信から4か月あまりのち、星空の下のフリーマントルでは、ステージの四人がアルバムの曲として、それをピアノ・ハウスのジャムとして鳴らしていた。

出典・注

[1] Tom Breihan, Caribou – "Come Find Me", Stereogum、2024年8月28日。本人の声明(DJセットでの反応、コード進行とフレンチ・タッチ、フックとブレイクダウン)と、書き手の評(声のサンプル、ダフニ名義に近いこと)、発表日とアルバムの曲順(5曲目)に使った。Stereogumは「Snaith says」とだけ書くが、同じ日のUnder the Radar(Mark Redfern, Caribou Announces New Album, Shares Video for New Song "Come Find Me"、2024年8月28日)は同じ言葉を「in a press release」として載せている。発表の宣伝文の中の言葉で、独立の取材ではない。

[2] Kerry Doole, Caribou Returns With The Eclectic Sounds of 'Honey', Billboard Canada、2024年10月4日。AIで声を変えたことについての本人の言葉に使った。記事は「he explains」として引くだけで、出どころ(宣伝資料か取材か)は書いていない。

[3] Reid BG, Caribou - Honey, Resident Advisor、2024年10月3日。アルバム評。AIの声についての全体の評と、この曲についての評に使った。評はこの曲の歌詞の一節も引いているが、本稿では扱わない。レーベルはCity SlangとMerge Recordsの表示。

[4] Dylan Barnabe, Caribou Is a Shapeshifter on 'Honey', Exclaim!、2024年10月7日。アルバム評。AIの声を使った曲としてこの曲を挙げた段落に使った。

[5] Caribou, Come Find Me, Bandcamp(本人頁)。アルバムの発売日(released October 4, 2024)に使った。単曲としての配信は8月28日([1])。

[6] Beatport, Come Find Me, 曲のページの表示。BPM・キー。ジャンル欄はDance / Pop、レーベルはCity Slang。

[7] Gareth Bryant, Review: Caribou @ Fremantle Arts Centre, scenestr、2025年1月8日。フリーマントル公演(1月7日)の記事。曲の並び(「Bowls」「Odessa」のあと)と「piano-house jam」の評、四人編成に使った。

← この曲のページへ