子どもの頃の野外フェスと、強がる男の歌
"I tried to write a summery and happy tune with a dark meaning."(夏らしくて楽しい、でも暗い意味を持つ曲を書こうとした)1
ニュージーランドの歌手ベニー(BENEE)は、2024年9月の新曲をこう説明した。子どもの頃は地元のフェスティバルに通っていて、その野外の空気を捉えたかった。ニュージーランドの音楽にはレゲエの気配を持つものが多く、それが自分にはとても懐かしいのだ、とも続けている。1
暗い意味のほうも、本人が言葉にしている。強がって見せているが、実は助けを必要としている傷ついた男と付き合い、その見せかけに苛立つ関係の歌だという。「悪ぶったイメージにだまされないで」と彼女は結んだ。1
夏の歌と、憂いの言葉
2年前の夏にも、彼女は似たことを書いていた。イギリスのバンド、イージー・ライフ(easy life)と組んだ「OTT」が出た2022年7月、ベニーは NME が伝えた言葉で、全体に夏っぽい曲で、自分は憂いのある歌詞に弱いのだ、と言っている。2 「Sad Boiii」は、その好みを自分の曲で正面からやってみせたものに見える。二つの発言を並べた書き手の読みで、本人が結び付けたわけではない。
出た週
曲は Republic Records から出た。Rolling Stone Australia は2023年以来の新曲だと書き、Stereogum のダニエル・チェロスキー(Danielle Chelosky)は、発表した9月5日、彼女がウォールズ(Wallows)のツアーを回っている最中で、まもなくオリヴィア・ロドリゴ(Olivia Rodrigo)の「GUTS」ツアーの前座に立つと伝えた。34 Rolling Stone Australia によれば、ロドリゴとはそのツアーのオーストラリア公演、10月に合流する予定だった。3
評者の言葉は短い。チェロスキーは「グルーヴィーな新曲」と呼び、Rolling Stone Australia は「軽やかな、ジャンルを混ぜ合わせた曲」と書いた。43 米国の MELODIC Magazine は、風通しのいいギターのコードと島の気配のあるビートを聴き取っている。5
混ぜ合わせの具合は、各サービスの表示にも出る。Beatport の表示では 113 BPM、B♭ マイナーで、ジャンルの欄は Rock。Deezer では Alternative、Discogs の単曲盤の登録では Hip Hop と Pop、スタイルは Indie Pop と Alt-Pop になっている。678 Qobuz の曲別クレジットには、ホーンの編曲者の名もある。9
ニュージーランドの公式チャートでは、9月13日から19日の週の Hot 40 Singles で25位に入った。その週だけの登場だった。10 翌2025年11月、曲は2作目のアルバム『Ur an Angel I'm Just Particles』の4曲目に、2分46秒の長さで収まった。9
子どもの頃に通った地元の野外フェスの空気を思い出して書いた曲が出た週、本人はウォールズと北米のツアーの終盤にいて、翌月にはオーストラリアのアリーナが待っていた。13
出典・注
[1] BENEE, 発売時の声明。Stereogum([4])、Rolling Stone Australia([3])、Dork、Our Culture ほかが同じ文面を載せている(いずれも2024年9月5日)。Our Culture は「press release」での発言と明記している。引用と、野外フェス・レゲエ・主題の説明に使った。声明には本人の恋愛の経験に触れる一文もあるが、本文では曲の主題として本人が説明した範囲にとどめた。
[2] Will Richards, Easy Life team up with BENEE on new single 'OTT', NME、2022年7月5日。「OTT」についてのベニーの言葉に使った。
[3] BENEE Drops Self-Professed 'Happy Tune With a Dark Meaning', 'Sad Boiii', Rolling Stone Australia、2024年9月5日。2023年以来の新曲であること、評の言葉(breezy genre-blender)、オーストラリア公演での合流に使った。署名は頁の本文に無い。
[4] Danielle Chelosky, BENEE – "Sad Boiii", Stereogum、2024年9月5日。発表の日、ウォールズのツアーとロドリゴの前座、評の言葉(groovy new tune)に使った。
[5] BENEE drops island-inspired single, "Sad Boiii", MELODIC Magazine、2024年9月9日。ギターとビートの描写に使った。この記事は2023年を「静かな一年」と書くが、Rolling Stone Australia([3])は2023年を彼女の際立った年として別の曲や出演を挙げており、書き方が分かれる。
[6] Beatport, Sad Boiii (Original Mix), 曲のページの表示。BPM・キー・ジャンル。長さ2:46、レーベル Republic Records、発売11/7/25(アルバムの日付)の表示。
[7] Deezer, Sad Boiii, カタログの登録値(API、ISRC で Beatport と一致)。ジャンル Alternative、発売日2024-09-04。
[8] Discogs, BENEE – Sad Boiii, release 31655252 の登録値。ジャンル・スタイルに使った。
[9] Qobuz, Ur an Angel I'm Just Particles, Qobuz(カナダ)、アルバムの頁の表示。4曲目、00:02:46、曲別クレジット(ホーンの編曲)、アルバムの発売日(11/7/25、Republic Records)に使った。この曲だけ℗の年が2024年。
[10] Official Aotearoa Music Charts, Hot 40 Singles(2024年9月13〜19日), ニュージーランドの公式チャートの頁。25位、Weeks 1 の表示に使った。前後の週(9月6〜12日、20〜26日)の表には載っていない。