音の個性を、フロアの動きへつなぐ
DJコーツェ(DJ Koze)は、Groove誌で「Buschtaxi」を、自分が探している、グルーヴがあり、ダンスフロアで踊りを支える音楽の例として肯定している。同じ取材で、笛の音とブレイクの盛り上がり方に手を加えたとも話す。1 ここでいうブレイクは、音の要素をいったん減らし、曲に空間を作る部分のことだ。5 曲の個性は、どんな音を選ぶかに加えて、その音をいつ、どう動かすかにもある。
笛の正体より、手を加えた場所
インタビュアーが笛の音は本物なのかと尋ねると、コーツェは、自分で加工したと答えた。続けて言及したのは、ブレイクの盛り上がり方だった。1 音の出どころを尋ねる質問に対して、答えは、完成した曲の中で何に手を加えたかへ向かう。
生の楽器か、録音から取った音か、電子的に作った音か。それを知ると素材の来歴が分かる。一方、加工や展開に注目すると、その素材を曲の中でどう働かせたかが分かる。笛とブレイクを並べた本人の説明には、音色と時間の使い方という、二つの制作上の判断が見える。
ブレイクの話は、さらにほかのDJへの関心にもつながる。Keinemusikは、レーベルを軸に制作やDJ活動を行う集団で、&MEとランパはそのメンバーだ。4 コーツェは&MEの展開を称賛し、拍を数えた通りより少し早く、あるいは遅く戻る感覚を、曲全体をリセットするものとして語っている。1 これは&MEについての評価であり、「Buschtaxi」が具体的に何小節で戻るかを示した説明ではない。
その評価から考えられるのは、盛り上がりが音を増やすことだけで決まるわけではないということだ。次の動きを待つ時間にも、曲の力は生まれる。音色を作る仕事と、聴き手の予想を動かす仕事を一緒に考えると、フロアで機能する曲についての説明にも、制作の細かな選択が加わる。
別のDJが使う、一曲の個性
コーツェは、Keinemusikも「Buschtaxi」をプレイしていると述べ、ランパの名を具体例として挙げる。それを喜びながら、曲にはやはり独自性があると話している。1
別のDJが使えることは、その曲に複数の置き場所があることを示す。一曲を作る人が考えた働きを、選曲する人が別の前後関係の中で生かす。本人の説明でフロアでの機能と独自性が並ぶのは、どちらも曲がほかの音楽と組み合わさるときに働く、と考えれば理解しやすい。
Pampa Recordsは2025年3月7日の告知で、12インチのA面に「Buschtaxi (Extended Version)」、AA面に「Brushcutter」を載せ、両曲を翌月の『Music Can Hear Us』からの曲と紹介した。2 公式BandcampのEP掲載では、Extended Versionは8分36秒だ。3 単曲として使うための盤と、アルバムで続けて聴く配置。その両方から一曲を考えられる。
聴くときには、笛の音色と、ブレイクの前後の変化を別々に追ってみたい。どの音が前へ出るのか、流れが変わってから次のビートが戻るまでをどう感じるのか。音の素材を知ることに加えて、その音が現れる時間へ注意を向けると、作者が手を加えた二つの場所を、具体的な比較の手掛かりにできる。
出典・注
[1] “DJ Koze: Den Verstand einwattieren”, Groove, 2025年4月2日。本人の制作・DJについての発言を参照。笛の素材や加工の機材・設定は特定していない。ランパの使用は本人談であり、個別セットの録音を確認した記述ではない。
[2] “OUT NOW: BUSCHTAXI — SUMMER BANGER FROM DJ KOZE”, Pampa Records, 2025年3月7日。12インチの曲目とアルバム告知を参照。
[3] 『Buschtaxi EP (PAMPA043)』, DJ Koze公式Bandcamp。EPの版名と掲載尺を参照。ここで扱う版は、この公式掲載の範囲に限る。
[4] “Crue”, Keinemusik公式。集団の活動とメンバーの紹介を参照。現行の紹介であり、「Buschtaxi」の演奏記録とは区別する。
[5] Dennis DeSantis, Making Music: 74 Creative Strategies for Electronic Music Producers, Ableton AG, 2015年、p.273。ダンス音楽のブレイクダウンの一般説明を参照。