比べる相手で、曲の見え方が変わる
HYUKOHとYu Suの「KoK」を、Under the Radarのマーク・レッドファーンは韓国のChemical Brothersを思わせる曲として紹介した。同じ記事は、プレスリリースがTame ImpalaとMac DeMarcoを参照点に挙げていることも伝える。1 一曲に向けられた三つの名前は、聴く人の注意を違う場所へ導く。比較する相手を変えると、「KoK」のどこを追いかけたくなるのだろう。
比較は、耳の向きを変える
音楽の紹介で別のアーティスト名を出すとき、その名前には多くの情報が折り畳まれている。曲の組み立て方、リズムの押し出し、声の置き方、録音の質感。聴き手がその名前から何を思い出すかによって、同じ比較も働きが変わる。
ここでは、記者自身の連想と、宣伝側が提示した参照点が並んでいる。二つの経路を見分けておけば、名前を影響関係の答えにする前に、自分の耳で比較できる。たとえば、歌を中心に曲の節目を追う聴き方と、反復するリズムがどれだけ身体を動かすかを追う聴き方。どちらで聴くかによって、同じ長さの曲でも、出来事が多く感じられたり、ひとつの流れが続いて感じられたりする。
Real Soundによると演奏時間は8分27秒。韓国のバンドHYUKOHと共同制作したYu Suは、ロンドンを拠点にするプロデューサー/DJとして紹介されている。2 この顔合わせは、バンドの演奏と、録音された音を組み立てる発想を一緒に考える入口になる。どの部分を誰が作ったかは、掲載情報だけでは分からない。だからこそ、聴く側もパートの担当を当てるより、歌・演奏・反復がどこで注意を引き継ぐかを追うと面白い。
スタジオ名から、一歩先へ
録音場所として報じられたReal World Studiosは、英国にある録音施設だ。2 公式紹介には、演奏者と録音技師が同じ空間で作業できるように設計されたBig Roomという部屋がある。3 演奏と録音の相談を近づけようとする、その設計自体が興味深い。
この設計が示すのは、制作を支える環境の一例だ。スタジオを機材の置き場としてだけでなく、人が音を聴き、反応を返す場所として見ることはできる。バンドと共同プロデューサーの顔合わせに加え、そのやり取りをどう進めるかという環境も、制作を考えるための視点になる。
次に「KoK」を聴くときは、まず声を曲の道標にし、次はリズムを道標にしてみる。8分27秒の中で印象に残る節目が同じになるか、ずれるか。紹介文に挙がった名前を覚えることより、その名前が開いた聴き方を自分で試すことで、一曲を長く楽しめる。
出典・注
[1] Mark Redfern, South Korean Band HYUKOH Share Crazy Video for Eight Minute New Song “KoK”, Under the Radar, 2026-08-28。記者の連想と、記事が伝えるプレス側の参照点。
[2] HYUKOH、最新シングル「KoK」配信リリース&MV公開, Real Sound, 2026-09-01。尺、共同制作、録音施設の報道。ここでは歌詞・映像の説明を用いていない。
[3] The Big Room, Real World Studios公式。施設の一般紹介。「KoK」がこの部屋を使ったとの主張には用いていない。