雰囲気とグルーヴ、原曲と別版
一曲の紹介には、音の雰囲気と踊りやすさという二つの尺度がある。マノ・ル・タフ(Mano Le Tough)の「Started Running」は、その両方から評され、別の作り手による版では、音の高さにも注目されている。リミックスで変わるものは、新しく加わる音だけではない。
雰囲気を作りながら、動きを残す
Resident Advisorのジャック・ヘイトン(Jack Haighton)は、原曲を、雰囲気を作りながらグルーヴを失わない例として評した。1 グルーヴは、リズムが作る動きの感覚を指す。音色や旋律に耳を向けながら、拍に沿って動ける曲、という評価だ。
ゆっくり展開する響きがあっても、リズムの手掛かりが残れば、音の変化を待ちながら動ける。ヘイトンの評は、雰囲気を深めることが、踊りを止めることには直結しないと読むための手掛かりになる。
音の高さから、別の位置へ
同じ評で、フィリプソン&ユリシーズ(Filipsson & Ulysses)の版は、音程を下げ、よりディスコに親しむ形になったと説明される。1 原曲を評する際の雰囲気とグルーヴに加え、版を比べる際には音の高さと、どんな音楽に近く感じられるかが加わっている。
公式曲目も「Started Running」とそのリミックスを別々に載せる。2 曲名を共にしながら、違う名前の作り手がもう一つの形を示す。何を足したかだけでなく、もとの音をどんな高さで捉え直したかも、別版を読む具体的な違いになる。
出典・注
[1] Jack Haighton, Mano Le Tough — Baby, Let's Love, Resident Advisor, 2010年8月4日。原曲とFilipsson & Ulysses版を分けて読む。音程を変えた具体的な処理方法は分からない。
[2] Dirt Crew公式Bandcamp『Baby, Letʼs Love』。原曲とリミックスを別の曲目として掲載。