My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2016年10月4日 追加

The Sea Inside

Mano Le Tough / Changing Days ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 2 分

海辺の記憶と、揺れる音の比喩

「The Sea Inside」を巡って、マノ・ル・タフ(Mano Le Tough)は自分の育った場所を話し、評者は船の揺れを思わせる言葉を使った。海という同じ景色に見えても、作り手の記憶と、聞き手が音へ与える比喩では、捉えているものが違う。

育った場所は、離れても残る

2013年のSoundwallの取材で、マノは海辺の村で育ったことを語り、この曲を幼少期と、生まれた場所が自分に残り続けることに結び付けている。音楽を作るときには、気分や感情を表したいとも答えた。1

ここで語られる故郷は、場所の名前や地図だけではない。離れた後も自分の中にある経験である。音楽へ向かう記憶は、現地の風景をそのまま再現することに限られず、その場所と今の自分との関係にもなる。

景色を、動きの言葉で捉える

Crackのジョシュ・ベインズ(Josh Baines)は、この曲を船酔いを思わせる航海の揺れにたとえる。2 穏やかな眺めというより、身体の重心が動くような言葉だ。景色を描く音楽も、音の動きとして受け取られることがある。

本人の回想が伝えるのは、何が自分に残っているか。評者の比喩が伝えるのは、その曲がどんな動きを思わせるか。記憶の出所と、音楽としての動きは同じ説明ではない。それでも二つを並べれば、故郷を表す曲を、静止した風景の絵だけとして捉えずに済む。

出典・注

[1] Mattia Tommasone, Mano Le Tough: lontano da casa ma col mare dentro, Soundwall, 2013年2月8日。取材中の本人の回想。

[2] Josh Baines, Mano Le Tough, Crack, 2013年3月12日。評者による比喩。海辺の音を実際に録音したという説明ではない。

← この曲のページへ