レコードを持ち寄る、という共作
6th Borough Projectの「If the Feeling's Right?」を考えるとき、レコードのコレクションは音を切り出す材料だけではない。二人の共作の話には、相手の持ってきた音楽から発想を始める、もう一つの働きがある。
音の重なりとして描かれた曲
『One Night In The Borough』の公式曲目には「If The Feelings Right」が3曲目に載る。3 フィリップ・シャーバーン(Philip Sherburne)は2011年のPitchfork評で、この曲と「Deep C」を、ぼやけたディスコのサンプルとシンセが、足取りの揺れる4拍子のキックや手拍子の周りで混ざり合うものと描いた。1 音の出所の一覧ではなく、重なったときの質感を捉えた批評だ。
相手のコレクションから始める
クレイグ・スミス(Craig Smith)とグレアム・クラーク(Graeme Clark)は、2013年のSoundwall取材で普段の共作を語っている。クレイグは自分のコレクションから音楽をスタジオへ持参するが、必ずしもサンプリングするためとは限らず、制作の雰囲気をつかむために聴くこともあるという。グレアムにとっては、自分で既によく知る盤を探すより、クレイグの持ってきた音楽の方が新しい刺激になる。2
この一般談は、曲中のサンプルの出典を教えるものではない。けれど、レコードが共作へ入る二つの位置を示す。録音の断片が作品の音になる場合と、聴いた音楽が二人の仕事を始めるきっかけになる場合だ。後者では、持ち寄った盤そのものが鳴らなくても、相手が選んだ音楽に接することが共作の一部になる。
出典・注
[1] Philip Sherburne, One Night in the Borough, Pitchfork、2011年6月22日。二曲をまとめた音の描写。
[2] Gaetano Venuti, 6th Borough Project: non esiste il Santo Graal dei BPM, Soundwall、2013年3月27日。二人の一般的な制作回答。
[3] One Night In The Borough, 公式Bandcamp。対象曲は3曲目、表示6:16。