My Music Research10 年分のライブラリを、追加日順に
2017年1月3日 追加

A Compliment - feat.HRRSN [Gorge Instrumental]

David Keno、HRRSN / Sunshine / A Compliment (feat. HRRSN) ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

二人の名で出た盤の、インストゥルメンタル

2013年3月25日、Noir Musicはデヴィッド・ケノ(David Keno)とHRRSNの名で『Sunshine / A Compliment』を出した。二つの曲に、それぞれ原曲と二つの別版が付く6曲入りだ。「A Compliment」の原曲は5分57秒。ゴージ(Gorge)のリミックスと、そのインストゥルメンタルは、どちらも7分10秒で最後に並ぶ。1 二人の名で出た盤の、インストゥルメンタルと名づけられた版。そこには誰の手つきが残るのか。

二人の作り手

ケノはスイスのベルン生まれ、ベルリンを拠点とするDJ・制作者で、自身のKeno Recordsを率いる。2 2016年には、2006年からベルリンに住むと話した。Noirは、彼が作品を出してきたレーベルの一つに挙がる。3 同じNoirからEPを出してきたサブ(Sabb)の曲は、「One of Us (Dennis Ferrer Remix)」のエッセイで扱った。HRRSNについては、読めた資料に人物の紹介がなかった。

ゴージは、マンハイムのピット・ヴァルトマン(Pit Waldmann)の名義だ。ニック・カーリー(Nick Curly)と8bit Recordsを運営してきた。紹介文は、そのレーベルの評判と並べて、ミニマルの流行を深く揺れるハウスへ引き戻したという「マンハイム・サウンド」に触れる。4 2010年の取材では、ベースとドラムがずっといちばん好きな楽器で、自分でベースラインを弾くのが好きだと話した。5 後年の取材では、リミックスには原曲の主な要素を、自分の音で弾き直してでも残すべきだとし、原曲の雰囲気を和音で、より深い旋律の音へ運ぶのだと語っている。制作でいちばん大事なのはグルーヴとベースラインだ、とも言う。6 どれもこのリミックスについての説明ではない。この版で何が残されたかを、読めた資料は語っていない。分かるのは、彼がリミックスでふだん何を残そうとしてきたかまでだ。

フロアのリスト

Beatportでは、もう一方の「Gorge Remix」が、122BPMのディープ・ハウスと表示される。この版を含むDJの推薦リストは、2013年春から夏の月々のもの、11月や2014年1月のものに及び、ニコ・ストジャン(Nico Stojan)の「Burning Man_Playa Chart 2013」もある。7 リストは選曲の表明で、かけた記録ではない。インストゥルメンタルの側には同じ表示が見当たらなかった。ストジャンは、ケノがKeno Recordsで共作してきた相手の一人でもある。2

流行の反対側

2018年、Electronic Grooveの取材でケノは、長くメロディックなものを作ってきたが、数年前にそれが流行になり誰もがディープ・ハウスをやろうとしたとき、機能的なテックハウスを作りたくなった、と振り返った。

"if the trend goes into one direction I like to go the opposite way"(流行が一方へ向かうと、反対へ行きたくなる)8

彼の言う「数年前」が何年を指すのかは、この取材からは分からない。

出典・注

[1] Sunshine / A Compliment – David Keno & HRRSN, Apple Music(米国)。発売日2013年3月25日、℗ 2013 Noir Music、6曲の曲順と長さ(ページ内の構造化データ)。

[2] Grahame Farmer, DT699 – David Keno, Data Transmission、2020年6月16日。ケノの経歴紹介(出身地、拠点、Keno Records、ストジャンらとの共作)。

[3] Jimbo James, Lovecast Episode 132 – David Keno, Music is 4 Lovers、2016年4月6日。ベルリン移住の本人談、記者によるレーベル歴の紹介。

[4] GORGE, Deeplomatic Recordings 公式のアーティスト紹介。日付表示なし。8bitの運営と「マンハイム・サウンド」の記述。

[5] Gorge Interview + Podcast #14, House Music With Love、2010年7月19日。本人談。

[6] Gorge Interview, Deep House Amsterdam。掲載日表示なし(感染症流行による休止明けの時期の取材)。リミックスと制作についての一般的な本人談で、この曲への言及はない。

[7] David Keno, HRRSN – A Compliment (Gorge Remix), Beatport。インストゥルメンタルでない方のリミックスの表示(ジャンル、BPM、長さ7:10、発売日)と、この版を含むDJの推薦リスト。

[8] Aria Groove, David Keno: "I try to stay away from trends", Electronic Groove、2018年2月8日。本人の回想(直接引用はここから)。この盤への言及はなく、「数年前」の年も示されない。

← この曲のページへ