重い話を、明るい拍に乗せる
2016年7月1日、Nylonでこの曲が初めて公開されたとき、ラヴィーナ(Raveena)は詞について、不健全で暴力的な関係を描いたものだと話した。1 三週間後、The Line of Best Fitは同じ曲を、夏を迎えるための歌として紹介した。2 重い題材と、夏の歌という受け取られ方。この二つは食い違っているのだろうか。
一年がかりの組み合わせ
ラヴィーナはマサチューセッツ生まれで、ニューヨークのクイーンズとコネティカットで育った歌い手だ。ビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドについては、二人の声を聴いて夢中になったと、後に話している。3 Nylonの記者タチアナ・シリサーノ(Tatiana Cirisano)は、彼女の音をトランペットが鳴り響く音と書いた。1
同じプレミア記事で、本人は詞を、前から歌にしたかった繊細な話だと言い、こう続けた。
"coupling these darker themes with a really upbeat hip-hop groove"(この暗い主題を、とても明るいヒップホップのグルーヴと組み合わせること)1
その組み合わせに夢見るような生のジャズ・オーケストラも加えたことが、もともと書いた話に力を与える要素になったという。記事によれば、明るい音と暗い主題の釣り合いを取るのに、彼女とプロデューサーのエヴェレット・オア(Everett Orr)は一年以上をかけた。1
夏の歌として
The Line of Best Fitのケリス・ケネリー(Cerys Kenneally)は、ファンキーなジャズ・オーケストラに都会的な打楽器を合わせた、夏のいちばん甘い音だと書き、聴けば踊り出すはずだと結んだ。2 評は題材に触れていない。
本人の説明では、明るい音は話に力を与える側に置かれていた。評は語り手としての彼女をたたえながら、言葉にしたのは組み合わせの片側、明るい音の方だった。二つの記事は食い違いというより、一年かけて組んだものの片側が先に届いた記録に見える。
二人のその後
2017年10月のThese Daysの記事は、オアを彼女のプロデューサーであり伴侶と紹介し、二人とも70年代のファンクと90年代のR&Bを音の手本に挙げると書いた。4 2018年1月のRookieの取材で、ラヴィーナは、いま出ている作品はすべてオアの制作で、多くのプロデューサーを経て彼と組んだときに自分の音を見つけたと話した。同じ取材で聞き手は、この曲と「If Only」を、傷つけられたことより自分の回復に目を向けた歌だと評している。5
次に聴くなら、2017年のEP『Shanti』だ。3Rookieの聞き手はそのEPの大きな主題の一つを自己愛と呼んだ。本人は自分たちの音を、70年代の音楽と、ディアンジェロやアリーヤのような90年代のものに影響を受けたと説明し、このEPを作る間は『ソウル・トレイン』をたくさん見たと話している。5
出典・注
[1] Tatiana Cirisano, Raveena Gets Real On Toxic Relationships On "Johnny It's the Last Time", Nylon、2016年7月1日。プレミア記事。詞と音の組み合わせについての本人談(直接引用はここから)、制作期間とオアの役割(記者の地の文)。記事中の詞の具体は本文に用いていない。
[2] Cerys Kenneally, Embrace the summer with Raveena's soulful offering "Johnny It's The Last Time", The Line of Best Fit、2016年7月21日。評者の聴き方。
[3] Dhruva Balram, Raveena Aurora: the cult hero carving a path for more South Asian artists, NME、2019年8月19日。生まれと育ち、ホリデイとフィッツジェラルドの声との出会い(記者の地の文と本人談)、『Shanti』の年。
[4] Rachel Blackman, Beginning to Understand the Aura of Raveena, These Days、2017年10月27日。オアとの関係と、二人が手本に挙げる音楽(記者の地の文と本人談)。本曲への言及はない。
[5] Ugochi Egonu, Keep Pushing Through: An Interview With Raveena, Rookie、2018年1月12日。制作者についての本人談、本曲を回復の歌とする聞き手の評、『Shanti』についての問答。