伴奏から生まれた曲の、ビートを引く
1987年にヒットしたザ・システム(The System)の「Don't Disturb This Groove」について、作り手のデイヴィッド・フランク(David Frank)は、最初に録音したとき、風変わりすぎて売れないかもしれないと思っていた。2011年の取材で、彼はそう振り返りつつ、最良の曲だという自信もあったと話した。1 取材を載せたブログの地の文によれば、曲はその年の5月にR&Bシングル・チャートの1位、7月にBillboard Hot 100の4位に届いた。1 2018年、ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)がこの曲をカバーしたとき、Slant Magazineの評者が耳を留めたのは、原曲の硬いビートが抑えられたことだった。
先にできた伴奏
クラシック・ピアノから出発したフランクは、Oberheimのシーケンサーやドラムマシン、シンセサイザーが出たとき、誰も聴いたことのない音楽を作ろうとしたと話す。ザ・システムは彼とマイク・マーフィー(Mic Murphy)の二人組だった。1
この曲では、フランクがまず伴奏のトラックを作った。三日近く、時間の無駄かと思いながら案を試したトラックに、マーフィーが詞と旋律を乗せた。ヴァースとサビのつなぎは二人で後から作り、そこに長くかかったという。1
抑えられたビート、重ねられた声
『Ventriloquism』は、2018年3月16日にNaïveから出た11曲のカバー集で、この曲は9曲目にある。23 Slant Magazineのジョシュ・ハースト(Josh Hurst)は、1980年代から90年代初めの鍵盤とドラムマシンで作られた曲を、主にギター、ピアノ、生のドラムで作り直した盤と書いた。この曲では原曲の硬いビートを抑え、サビにハーモニーの声を重ねたと評し、こう続ける。
"swapping the intimacy of the dance floor for the refuge of the bedroom"(ダンスフロアの親密さを、寝室という避難所に取り替えた)2
PopMattersのエイドリアン・ポンテコルヴォ(Adriane Pontecorvo)も、シンセポップからクワイエット・ストーム(夜向けのゆったりしたR&B)へ移ったと書いた。4 フランクの話では、原曲は伴奏のトラックが先にでき、詞と旋律があとから乗った。ハーストの評では、カバーは原曲の硬いビートを抑え、サビに声を重ねた。曲ができた順序を逆からたどった版と、私は読む。
詞とビート
ベースを弾いて歌うンデゲオチェロは、フランスのFunk-Uの曲ごとの取材で、この曲はすばらしい曲だとだけ言い、盤を聴いた人が再発見してくれればと話した。同じ取材では別の曲について、この盤の考えは曲の書かれ方を際立たせ、元のジャンルの囲いから出すことだったと答えている。5 Exclaim!の取材では、歌でいちばん記憶に残るのは詞とビートで、自分はそれに自分の考えと色を着せるのだと言った。この盤を作った頃は自分の父とギタリストの両親が亡くなった時期で、音楽には憧れと悲しみがあるとも話している。6
NPRのタヴィア・ニョンゴ(Tavia Nyong'o)は、この盤が訪ね直すのは、こうした曲が電波を席巻した1985年から95年だと書いた。7 作り手が風変わりすぎるかもしれないと案じた曲を、ニョンゴはその時代の曲の一つとして挙げ、この盤はそれらを再び奇妙に響かせると書いた。
出典・注
[1] Old School Tim, Interview with David Frank of The System, Rediscover the '80s(2020年10月の再掲。初出は2011年9月10日、ブログKickin' it Old School)。フランクの回答(経歴、機材、マーフィーとの出会い、曲の作り方、シングルの選択、発売当時の見込み)。チャートの順位は取材者の地の文で、チャートの原資料は確認していない。
[2] Josh Hurst, Review: Meshell Ndegeocello, Ventriloquism, Slant Magazine、2018年3月2日。盤と本曲の評。レーベルと発売日は評の末尾の表示。直接引用はここから。
[3] Don't Disturb This Groove, iTunes Lookup API(Apple Music の曲情報)。『Ventriloquism』11曲中9曲目、4:38、2018年3月16日の表示。
[4] Adriane Pontecorvo, Meshell Ndegeocello's 'Ventriloquism' Shows She Can Play Any Song and Stay True to Herself, PopMatters、2018年3月16日。盤の評。本曲については一文のみ。
[5] Funk-U Magazine(聞き手 Christophe Geudin), Interview : Meshell Ndegeocello raconte "Ventriloquism", Funk-U、2018年3月13日。曲ごとの回答(フランス語)。盤の考えについての答えは「Tender Love」の項。
[6] A. Harmony, Meshell Ndegeocello's Covers Album 'Ventriloquism' Explores Sadness and Longing, Exclaim!、2018年3月14日。本人の回答。録音時期の出来事は盤全体についての話で、本曲に限った話ではない。
[7] Tavia Nyong'o, Disturb This Groove: What Is The Legacy Of Soul Music?, NPR(The Record)、2018年3月24日。盤についての論評。時代の区切りと「奇妙に響かせる」は評者の言葉。