「毎回ゼロから」と、十年前の「Pogo」
2017年12月にDancing Astronautに載ったライアン・ヒンクリー(Ryan Hinkley)の取材で、ハンブルクの二人組デジタリズム(Digitalism)は、「Jet」を、デビュー盤『Idealism』の「Pogo」と並べて語った。記事によれば、どちらも転がるようなシンセと速いハイハットを持つ曲だという。記事は、二人がアルバムごとに同じことの繰り返しを避けようとしていると書き、二人の言葉をこう伝える。
"With every release, we start from zero"(どの作品でも、ゼロから始める)1
十年前の曲との似た点を挙げながら、作り方はゼロから始めると言う。この曲は、その二つの言葉のあいだにある。
地元の掩蔽壕で
二人はイェンス・メレ(Jens "Jence" Moelle)とイスマイル・テュフェクチ(İsmail "Isi" Tüfekçi)だ。1 Acid Stagのナット・テイラー(Nat Taylor)は、二人が2000年代半ばから後半のブログハウスの波に乗り、デビュー盤『Idealism』で登場したと紹介した。2 ヒンクリーの記事によれば、二人は地元の第二次大戦期の掩蔽壕で、ほかの地元の音楽家たちと制作するのを好み、ツアー中に作った音も、出す前には必ずそこへ持ち帰る。『Idealism』も、この「Jet」を含むEP『5KY11GHT』も、そうして作られたという。1
叩いたのは誰か
2017年10月27日付の告知記事は、デジタリズムが新シングル「JET」を公開したと伝え、先に出た「Spektrum」に続く、新たに発表したEP『5KY11GHT』からの曲だと書いた。この回はMixhellのイゴール・カヴァレラ(Igor Cavalera)のドラムが加わっている、と文面は記す。3 作り手の側の宣伝文である。Exclaim!は2013年、カヴァレラをブラジルのメタル・バンド、セパルトゥラの元ドラマーとして知られ、いまはDJの妻ライマ・レイトン(Laima Leyton)らとMixhellで電子音楽を演奏している人と紹介していた。4
EPは11月に二人のレーベルMagnetismから出た。15 公式Bandcampでは5曲入りで、「Jet」は1曲目、6分6秒だ。6 ヒンクリーは、15曲、11曲、17曲だったこれまでのアルバムと比べて小ぶりで、歌のない盤だと書き、小さな作品を数多く出すのがよいという考えに二人も同意している、と伝えた。1 Beatportは「Jet」を125BPMのElectronicaと表示する。5
勢いをいったん消す
告知の文面は、曲の途中でほとんど無音まで落ち、器楽の音と深い金管でゆっくり積み直すと書いた。3 テイラーの評も同じ場所を挙げる。前の勢いを散らしながら、別のやり方で聴き手を持ち上げ直す長いブレイクが、評で先に取り上げた「Spektrum」と「Jet」に共通すると述べ、「Jet」ではそれがマリアッチ風の響きとして現れ、そのあとベースとシンセが力強い締めへ運ぶという。ほとんどホルンのように響く深い鍵盤を、アフターアワー向きとも書いた。2 「Pogo」と並べられた速いハイハットの一方で、告知と評がそろって書き込んだのは、途中で一度勢いを落とす箇所だった。
テイラーによれば、次の「Highspeed Sunrise」でも同じマリアッチ風のトランペットが背後を横切る。2 EPで「Jet」の次に置かれた、2分52秒の曲だ。6
出典・注
[1] Ryan Hinkley, Musical Medicine: A Conversation with Digitalism on '5KY11GHT' and Beyond, Dancing Astronaut、2017年12月12日。「Pogo」との比較と制作場所(記者の地の文)、本人たちの言葉(直接引用はここから)、盤の規模とレーベル。
[2] Nat Taylor, Digitalism – "5KY11GHT" [EP Review], Acid Stag、2017年12月1日。二人の紹介と、「Jet」「Highspeed Sunrise」についての評者の記述。
[3] Digitalism Announce 'JET' as Follow-Up Single to 'Spektrum', BroadwayWorld、2017年10月27日。シングル公開の告知。本文は宣伝文(プレスリリース)で、ドラムの参加と曲の説明はこの文面の記述。独立の資料では確かめていない。
[4] Sepultura's Igor Cavalera Goes Electronic on Debut Album with Mixhell, Gets Gui Boratto and Greg Puciato to Guest, Exclaim!、2013年4月4日。カヴァレラとMixhellの紹介(記者の地の文)。
[5] 5KY11GHT, Beatport。発売日2017-11-24、レーベルMagnetism、ページ内データの曲別BPM・ジャンル。
[6] 5Ky11ght, Digitalism公式Bandcamp。released November 27, 2017(Beatportの日付と3日違う)、五曲の曲順と長さ。