差し替えたレコードの、B面
2017年3月23日掲載のMixmagの取材で、メルボルンのハーヴィー・サザーランド(Harvey Sutherland)ことマイク・カッツ(Mike Katz)は、MCDEに最初に送ったのはかなりストレートなハウス、クラブ向けの一曲だったと明かした。レーベルの音はそういうものだと考えていたという。レーベル側は出す準備ができていたが、彼は気が変わった。1
"That's not the sort of music I want to make anymore"(もうそういう音楽は作りたくない)1
そこから半年をかけて、よりディスコに寄った曲を作り、そのほうがしっくりきたと話す。ディスコの道を本格的に進むと決めた瞬間だったのかと問われると、確かにきっかけだった、ハウスに少し飽きていた、と答えた。1 本人の話の流れでは、MCDEから出たのは、差し替えた側の曲だった。そのB面が「New Paradise」だ。
十一公演の前に
2015年4月21日、Resident Advisorは、カッツがダニーロ・プレッソウ(Danilo Plessow)の耳に留まり、次の12インチ『Bermuda』をMCDEから出すと伝えた。発売に先立ち、5月15日から30日まで欧州で11回のライブを行うという。2 公式Bandcampでは、発売日は2015年5月29日、曲は「Bermuda」と「New Paradise」の二つ。作曲・録音・編曲・制作はカッツ本人、弦の編曲はT・ロジオン(T. Rogeon)とクレジットされる。3
二つの評
7月、Resident Advisorのパトリック・ファロン(Patric Fallon)は、プレッソウのレーベルMCDEからのこの盤で、両面がタミル・ロジオン(Tamil Rogeon)の弦編曲をクレジットしているのは大事な細部だと書いた。「New Paradise」は深く泡立つようなソウルでB面を満たし、二曲とも70年代末から80年代初めのT.K.ディスコの、控えめな側を狙っているようだという。4 8月、Inverted Audioのトム・フェイバー(Tom Faber)は、この曲を、踊りへ誘う「Bermuda」に対する、夕暮れにくすぶる曲と呼んだ。鍵盤と控えめな弦が、削ぎ落としたキックとクラップに寄り添うと描き、クラブでの力は特にA面が侮れないと添えている。5 二人とも、踊らせる役をA面に預け、この曲をその対として描いた。
弦を重ねた人が、バンドの人になる
2017年3月のAcclaimの取材で、カッツは、ロジオンとは何年も前の大晦日の夜に出会い、やがて自分の作りかけのディスコの曲に弦を録ってもらうようになったと話している。6 Mixmagの記者は、この12インチを、のちにバンドの仲間になるロジオンが一人で弦を担った盤と紹介した。1 同じ年の6月、オスロのクラブJægerのサイトの取材では、三人組ハーヴィー・サザーランド&バミューダ(Harvey Sutherland & Bermuda)として、ロジオンとドラムのグレアム・ポグソン(Graeme Pogson)が並ぶ。聞き手が、バンド名はロジオンが加わった曲「Bermuda」から取られたと言うと、ロジオンは、あの曲では何度かセッションをした、と応じた。7
2017年のMixmagで、ディスコの旅のどのあたりにいるかと問われたカッツは、いまがおそらく頂点で、次の作品はもう少しダンスフロアから離れるかもしれないと答えた。1
出典・注
[1] Louis Anderson-Rich, Soulful, rhythmic and vibey: Enter the world of Harvey Sutherland, Mixmag、2017年3月23日。MCDEへの最初の送付と送り直し、半年、ハウスに飽きたこと、いまが「disco odyssey」(聞き手の語)の頂点だという答えは本人の回答(直接引用はここから)。『Bermuda』とロジオンの紹介は記者の地の文。
[2] Andy Webb, Harvey Sutherland preps 12-inch for MCDE, Resident Advisor、2015年4月21日。プレッソウの耳に留まったこと、欧州11公演の告知(記者の地の文)。
[3] Bermuda, Harvey Sutherland公式Bandcamp。released May 29, 2015、二曲の曲順と長さ(New Paradise 06:50)、クレジット(Written, recorded, arranged and produced by H. Sutherland/Mix engineer J. David Franzke/String arrangements by T. Rogeon)。
[4] Patric Fallon, Harvey Sutherland - Bermuda, Resident Advisor、2015年7月29日。MCDEがプレッソウのレーベルであること、弦のクレジット、両面の描写(評者の記述)。
[5] Tom Faber, Review: Harvey Sutherland: Bermuda, Inverted Audio、2015年8月17日(ページ内データの公開日)。「New Paradise」を「twilight burner」と呼ぶ記述と、A面のクラブでの力(評者の記述)。
[6] Upfront: Harvey Sutherland, Acclaim、2017年3月24日(ページ内データの公開日)。ロジオンとの出会いと弦の録音についての本人の回答。どの曲の弦かは特定していない。
[7] Mischa Mathys, An old acquaintance with Harvey Sutherland & Bermuda, Jæger、2017年6月21日(ページ内データの公開日)。三人の編成(記者の地の文)、バンド名の由来は聞き手の発言で、ロジオンの応答は「何度かセッションをした」まで。