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2019年6月30日 追加

Space Odyssey

Marcus Belgrave / Gemini II ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

クレイグの版で吹いていた作曲者

マーカス・ベルグレイヴ(Marcus Belgrave)の『Gemini II』を扱うLight in the Atticの販売ページは、一曲目の「Space Odyssey」を、のちにデトロイト・テクノの重鎮カール・クレイグ(Carl Craig)がカバーした曲と紹介する。1 紹介文はどの録音かを書いていない。だが2003年、クレイグが加わったThe Detroit Experimentの版を評したThe A.V. Clubのアンディ・バッタリア(Andy Battaglia)は、その中心にベルグレイヴ本人のトランペットを聴いていた。2 クレイグの側の録音で吹いていたのは、作曲者自身だった。

デトロイトの一枚目

AP通信のジェフ・カラウブ(Jeff Karoub)によれば、ベルグレイヴは1950年代末にレイ・チャールズ(Ray Charles)のバンドに加わり、1962年にデトロイトへ来てMotownのスタジオで吹いた。2015年5月、78歳で亡くなっている。3 販売ページは『Gemini II』を彼の最初のアルバムと呼び、Tribeレーベルを興したウェンデル・ハリソン(Wendell Harrison)とフィル・ラネリン(Phil Ranelin)の参加を挙げる。1 Planet Eの再発盤のページには、9人の奏者が盤全体のクレジットとして並び、TribeとGem Eyeからの初出、1972年の出版権表示が記される。4 Appleの配信データは発売年を1974年、この曲の長さを12分26秒と表示する。5

本人が吹く、別の版

バッタリアは、クレイグがデトロイトのジャズ奏者たちと組んだこの盤を、70年代フュージョンへまっすぐ線を引き戻す作りだとして、全体には厳しかった。そのうえで「Space Odyssey」を、数少ない、それも弱い聴きどころの一つとして、こう書いた。

"a solid mid-tempo groove around the darting glide of Marcus Belgrave's trumpet"(マーカス・ベルグレイヴのトランペットの素早い滑走を囲む、しっかりしたミッドテンポのグルーヴ)2

2013年に出たピアニストのジェリ・アレン(Geri Allen)の盤で、ベルグレイヴと二人でこの曲を演奏している。Audiophile Auditionのダグ・シンプソン(Doug Simpson)は、ベルグレイヴをアレンの師と書き、深い残響を通した彼の息の多い音と、旋律と背後のリズムを受け持つアレンのピアノを描いている。6

レーベルの側から

クレイグが率いるPlanet Eは、2019年、元のテープからリマスターした『Gemini II』を出し直した。4 EDM Identityのグラント・ギルモア(Grant Gilmore)によれば、2022年にレーベルの30年を祝ってクレイグが選んだ編集盤にも、The Detroit Experimentの「Space Odyssey」が入った。7

その間の2020年1月12日、ニューヨークのWinter JazzFestで開かれたベルグレイヴの記念公演について、リンダ・ヨーン(Linda Yohn)は、クレイグが機材を持ち込み、「Space Odyssey」に電子音の層を足したと書いている。弟子たちが彼の曲を演奏した部では、トランペット奏者のドワイト・アダムズ(Dwight Adams)が、ベルグレイヴ自身のトランペットを吹いた。8

出典・注

[1] Marcus Belgrave | Gemini II, Light in the Attic。掲載日表示なし、販売ページの紹介文(宣伝文)。「カバー」「最初のアルバム」「Tribeの創設者」はこの紹介文の言葉。オリジナルのジャケットでの再発と紹介するが、どの版の商品かは本文では扱っていない。

[2] Andy Battaglia, The Detroit Experiment, The A.V. Club、2003年4月8日。盤の評と本曲への言及。直接引用はここから。評者の聴き方であり、制作側の説明ではない。

[3] Jeff Karoub (Associated Press), Famed Detroit Jazz Trumpeter Marcus Belgrave Dies At 78, CBS Detroit、2015年5月24日。経歴と訃報。

[4] Marcus Belgrave – Gemini II (Remastered) LP, Planet-e公式ショップ。曲目、奏者と楽器、録音スタジオ、「Original release on Tribe and Gem Eye」「C 1972 Edmarsyl Publishing」「C & P 2019 Planet E Communications」、Bill Skibbeによる元テープからのリマスター。奏者一覧は盤全体のもので、本曲の編成ではない。

[5] iTunes Search API(Apple Music の曲情報)。『Gemini II』の「Space Odyssey」746,260ミリ秒、発売日表示1974-01-01(id 301282520)。ライブラリの12:28とは2秒違い、同じ録音かは長さからは確定しない。

[6] Doug Simpson, Geri Allen, solo piano – Grand River Crossings, Audiophile Audition、2013年10月28日。「師(mentor)」は評者の言葉。音の描写は評者のもの。盤は公式Bandcampで2013年9月10日発売。

[7] Grant Gilmore, Carl Craig Curates 30 Tunes to Celebrate 30 Years of Planet E Communications, EDM Identity、2022年5月29日。編集盤『Planet E 30』の紹介と曲目。

[8] Linda Yohn, From Detroit to the World: Celebrating Marcus Belgrave, SEMJA Update(南東ミシガン・ジャズ協会)、2020年3月号。公演の司会を務めた筆者の回想と評。

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