四百万枚の盤が、配信に出るまで
2012年6月19日、オーストラリアのNoise11で、アンドリュー・タイス(Andrew Tijs)は、サン・ジェルマン(St Germain)の『Tourist』がリマスターされ、初めてデジタルで出ると伝えた。記事によれば、2000年にBlue Noteから出たこの盤は世界で四百万枚を売り、長くレストランやファッションショー、カフェの定番になった。リマスター版は6月29日に出る予定で、iTunes版にはフランスの歌手クロード・ヌガロ(Claude Nougaro)が歌うライブの曲が加わり、2枚組のLPにも出るという。1 記事の通りなら、盤としての『Tourist』が配信に出たのは、発売の12年後だった。
8分間のグルーヴ
2001年1月、All About Jazzのロブ・エヴァノフ(Rob Evanoff)は、前年いちばん好きな盤として『Tourist』を挙げた。名も知らない盤がジャズのチャートの上位にあるのを見て取り寄せた、という書き出しだ。3曲目の「So Flute」については、テクノとダブの染みた太いグルーヴの波頭に乗って8分間走る、と評している。2 評に付いた演奏者の一覧には、指揮としてのルドヴィク・ナヴァール(Ludovic Navarre)のほか、サックスとフルートのエドゥアール・ラボール(Edouard Labor)、トランペットのパスカル・オース(Pascal Ohse)、ギターのアーネスト・ラングリン(Ernest Ranglin)らが並ぶ。これは盤全体の一覧で、曲ごとの担当は示されていない。2
2021年1月31日のRadio-Canadaの記事で、番組『Le 15-18』に出たナヴァールは20年前を振り返った。当時の電子音楽はリズムがどんどん速くなっていて、自分はその逆を取った。テクノから少し離れ、少しずつハウスとディープ・ハウスを作るようになった、という。北米で一般に作られていたものとの違いを、彼はこう言う。
"j’ai amené une formation plutôt qu’un soliste"(ソリストではなく、編成を連れてきた)3
Blue Noteから出たのは、EMIと契約したときに自分から頼んだからだ、とも話している。3
リマスター盤の表示
Qobuzの『Tourist (Remastered) [Deluxe Version]』では、盤の発売日は2000年5月30日と表示されるが、盤の権利表示は© ℗ 2012で、各曲の℗は1999年だ。「So Flute」は8分27秒。作曲・制作・編曲にナヴァール、編曲にもう一つ「The Magic House Stud」の名がある。10曲目には、ヌガロとの「Suivez le guide」が℗ 2001で加わっている。4
エヴァノフが8分間走ると書いた曲は、2012年の盤では8分27秒と表示され、1999年の℗を付けて、2000年の日付の下に並んでいる。
出典・注
[1] Andrew Tijs, St Germain’s Tourist Remastered And Going Digital, Noise11、2012年6月19日。初のデジタル化とリマスター、2000年のBlue Noteからの発売、四百万枚、定番になったという記述、6月29日の発売予定、ボーナス曲「Touristes」と2枚組LP(記者の地の文)。
[2] Rob Evanoff, St Germain: Tourist, All About Jazz、2001年1月1日。前年のベストとしての評、「So Flute」の記述(評者の聴き方)、盤の演奏者一覧。
[3] Les 20 ans de Tourist, album phare de St Germain, racontés par son créateur, Radio-Canada、2021年1月31日。番組『Le 15-18』のカトリーヌ・リシェ(Catherine Richer)によるナヴァールの談話の記事(フランス語、直接引用はここから)。盤全体についての回想で、「So Flute」個別の話ではない。
[4] Tourist (Remastered) [Deluxe Version], Qobuz。Released on 5/30/00、Parlophone (France)、© 2012 / ℗ 2012 Primary Society, licence exclusive EMI Music France、各曲 ℗ 1999、3曲目 So Flute 00:08:27 とクレジット、10曲目 Suivez le guide ℗ 2001、10曲・ビデオ2本。Noise11が伝えたボーナスの題「Touristes」とは表記が違い、同じ録音かは確かめていない。