編み直しの盤に入った、自作の一曲
パリの五人組アカレ・ウベ(Akalé Wubé)は、自分で曲を書かないところから始めた。Africulturesのグループ紹介によれば、彼らは2008年10月、Éthiopiquesの復刻シリーズで知ったエチオピアの黄金期の曲を、今の音に編み直そうと集まった。まずは既存の曲を拾い直すことで、エチオ・ジャズの決まり文句に陥りかねない自作を書かずに済んだ、という言葉が紹介文に引かれている。名は、サックス奏者ゲタチェウ・メクリヤ(Getatchèw Mèkurya)の曲から借りた。1
2010年8月30日、ジャズ誌Citizen Jazzのマティアス・クスニエルツ(Mathias Kusnierz)は、その最初のアルバム『Akalé Wubé』を評した。発端はジャズのカルテットFRIXのサックス奏者エティエンヌ・ドゥ・ラ・サイエット(Etienne de la Sayette)とドラマーのダヴィッド・ジョルジュレ(David Georgelet)だった。2008年秋の結成から2010年5月の発売までに、フランスで四十ほどの公演とモロッコでのツアーを重ねたという。評者は、エチオ・ジャズの定番を編み直した曲に、四つの自作が加わると書き、その一つに「Jawa Jawa」を挙げた。2 盤の曲を描き分ける列挙の中で、彼はこの曲をこう呼んでいる。
« longues incantations de cuivres »(管の長い詠唱)2
5分43秒と、4分48秒
公式Bandcampでは、盤は2010年5月10日の発売で、「Jawa Jawa」は3曲目、5分43秒だ。3 Appleのデータではレーベルは Clapson、長さは約5分44秒である。4
四年後、この曲は別のテイクでもう一度世に出た。2014年、Trikontが出した編集盤『Beyond Addis (Contemporary Jazz & Funk Inspired By Ethiopian Sounds From the 70's)』は、13組の演奏の1曲目に「Jawa jawa (Alternate Take)」を置く。Appleのデータでは約4分48秒で、ザ・ヘリオセントリックス(The Heliocentrics)、ザ・ブードゥス・バンド(The Budos Band)、デボ・バンド(Debo Band)らが後に続く。5
The Wireの2014年5月号でこの盤を評したウェイン・マーシャル(Wayne Marshall)は、自身のサイトに再掲したその評で、集められたのはロンドンやニューヨーク、ボストンなど欧米の各地のグループが、主題、ソロ、主題の形で丁寧に演奏したインストゥルメンタルだと書いた。どのグループも、ムラトゥ・アスタトゥケ(Mulatu Astatke)らが四十年前に探ったフリー・ジャズやサイケ・ロック、ハード・バップ、ファンクと伝統音楽の混ぜ方を、自分なりに差し出しているという。そのうえで、パリのアカレ・ウベが敬虔だが歪んだ「Jawa Jawa」で盤を開けると記している。6 各地の新しいエチオ・ジャズを集めた盤の先頭に置かれたのは、既存の曲を編み直すことから始めたバンドの、自作の一曲だった。
出典・注
[1] Akalé Wubé, Africultures(グループ紹介、仏英併記)。2008年10月の結成、Éthiopiquesで知った曲を編み直すという方針と、自作を書かずに済んだという話(紹介文中のバンドの言葉)。
[2] Mathias Kusnierz, Akalé Wubé, Citizen Jazz、2010年8月30日。デビュー盤の評(評者の記述、フランス語)。結成の経緯、名の由来、公演数、四つの自作(Nebyat、Jawa Jawa、Kokob、Ragalé)、各曲の描写(直接引用はここから)。
[3] Akalé Wubé, Akalé Wubé公式Bandcamp。曲目と長さ(3曲目 Jawa Jawa 05:43)、released May 10, 2010。紹介欄の各媒体評の抜粋は使っていない。
[4] iTunes Lookup API: Akalé Wubé, Apple。℗ 2010 Clapson、盤の日付2010年5月7日、3曲目 343,651ミリ秒。
[5] iTunes Lookup API: Beyond Addis, Apple。℗ 2014 Trikont、盤の日付2014年3月28日、13曲、1曲目 Akalé Wubé「Jawa jawa (Alternate Take)」288,187ミリ秒。別テイクがいつ録られたかは表示されていない。
[6] Wayne Marshall, Beyond Addis (review), Wayne & Wax、2014年12月22日。The Wire 2014年5月号(Issue 363)に載せた評を、評者自身のサイトに再掲したもの(評者の記述)。再掲には最終稿でない「director's cuts」が混じると評者が断っている。評が対象にしたのは編集盤で、収録は別テイク。