高校生程度の英語で書いた詩
台北のバンド、落日飛車(Sunset Rollercoaster)で歌とギターを担う曾國宏(Kuo Hung Tseng、愛称は國國)は、3作目のアルバム『SOFT STORM』の歌入れを、2021年1月に台湾の音楽メディアBlow 吹音樂に載った取材でこう振り返っている。
「一直以來我對自己的唱歌沒有什麼信心,因為怕自己表現不好」(ずっと、自分の歌に自信がなかった。うまく歌えないのが怖くて)1
記事によれば、彼は曲を作るとき、自分の歌唱力で歌えるかをあまり考えない。本番前のテイクは感情が自然でも、息継ぎや音程に技術的な問題が残り、直そうとすると感情と技術を同時に保てなくなる。録り直しを重ねて自分を疑い、発売も延びた末に、彼は安溥(アンプー)に歌の指導を頼んだ。記者は、歌入れこそ盤の録音でいちばん難しい部分だったのかもしれない、と書いている。1 國國は2012年末から2016年初めまで、当時は張懸の名で活動していた安溥のバンドAlgaeでギターを弾いていた、と同じ年の11月にVERSEの取材で話している。2
盤の中の「Under the Skin」
Blowの記者、阿哼は、『柔性風暴』(柔らかな嵐)という中国語の題が疫病の流行を指し、その中の愛と別れが「Overlove」「Under the Skin」「Passerby」にあると書く。記者は「Under the Skin」を欲望のささやきであり人間性の省察だと評し、國國自身はこの曲を、高校生程度の英語で詩を書くことへの挑戦だったと見ているという。1
公式Bandcampのクレジットでは、作詞作曲は曾國宏。彼が歌、ギター、シンセサイザーを受け持ち、陳弘禮がベース、羅尊龍が歌とドラム、王少軒がシンセサイザーとローズ、黃浩庭がピアノとメロトロンを弾く。プロデュースとミックスは杜澤威(Jon Du)で、演奏は台北のMorisound Studio、歌はYucheng Recording Studioで録られた。英語の詞には、姚泓宇による中国語訳が添えられている。3 Blowの記事によれば、アルバムのローズの音は音程の調整の手間から、どれもコンピューター上で模した音色を使った。ミックスは杜澤威の家か、レーベル夕陽音樂の作業場で行ったという。1
Appleでは、3分47秒のこの曲は2020年10月26日付の単曲として出ており、同じ長さで同じ日付のアルバムの3曲目にもある。公式Bandcampのアルバムの発売日は10月30日だ。34 VERSEの陳葶芸は、バンドがこのアルバムで2021年の金曲獎の最優秀バンド賞を得たと書いている。2
安溥のやり方を、國國はBlowでこう伝えている。曲が何を歌うのか分かっていれば、正解も間違いもない。ただ音楽は一本の線のように進むので、頭に考えがいくつあっても、一度に一つしか選べない。1
出典・注
[1] 阿哼, 【吹專訪】前方合成器高能反應,落日飛車國國談《SOFT STORM》:我突然對音樂裡的groove疲乏了, Blow 吹音樂、2021年1月7日(中国語)。2020年末の取材。歌への自信のなさ(直接引用はここから)、歌入れの難しさと安溥への依頼、安溥のやり方の説明(國國の言葉)。題と疫病、三曲の愛と別れ、「Under the Skin」を欲望のささやき・人間性の省察とする評(記者の地の文)、「高中生水平」の英語の詩への挑戦(國國の自認として記者が伝える)。ローズの音色とミックスの場所はアルバム全体についての記述で、曲ごとの説明ではない。安溥の指導がどの曲の歌入れに及んだかは書かれていない。歌入れがいちばん難しかったという記述は記者の推量(「或許」)。
[2] 陳葶芸, 來自台灣的柔性風暴:落日飛車如何成為活躍在國際的獨立樂團?, VERSE、2021年11月14日(中国語)。Algaeでのギター奏者の時期(國國の言葉)、2021年金曲獎最優秀バンド賞(記者の地の文)。
[3] Under the Skin, Sunset Rollercoaster 落日飛車公式Bandcamp。from SOFT STORM、track released October 30, 2020、クレジット(作詞作曲、演奏者と楽器、プロデュース・ミックス・編曲、録音スタジオ、歌の録音、マスタリング、歌詞翻訳)。アルバムの頁(SOFT STORM)で、3曲目 03:47、released October 30, 2020。
[4] iTunes Search API: Sunset Rollercoaster Under the Skin, Apple(台湾)。「Under the Skin - Single」1曲と『SOFT STORM』3曲目(9曲)、いずれも2020-10-26・227,397ミリ秒。