亡命先の歌が、半世紀後の再生回数へ
2022年4月、フランスの制作デュオ、シナプソン(Synapson)は、アンゴラの歌手ボンガ(Bonga)と組んだ「Mona Ki Ngi Xica」を正式に発売した。Magnetic Magazineのエイダン・グラント(Aidan Grant)によれば、この版はもともと二人のYouTubeに非公式のリミックス(ブートレグ)として上がり、聴き手の求めでフランスのUnity Recordsから出ることになった。二人は声明で、YouTubeの再生が3,000万回を超えたと書き、ボンガの厚意と支えに礼を述べている。1 この曲は、ボンガが1972年に亡命先で作った最初のアルバムに入っていた。
ロッテルダムの一枚目
ボンガの作品を出すLusafricaの略歴は、彼を1942年生まれ、本名ジョゼ・アデリーノ・バルセロ・デ・カルヴァリョ(José Adelino Barcelo de Carvalho)と紹介する。1960年代半ばに陸上競技でポルトガルへ渡り、本名で400メートルの国内王者になる一方、アンゴラ解放人民運動(MPLA)に加わっていた。それが知られると、オランダのロッテルダムへ逃れた。1972年、そこでカーボベルデの音楽家たちとオランダのレーベルMorabezaに録ったのが『Angola 72』で、独立闘争の伴奏のような一枚になり、その中心の曲が「Mona Ki Ngi Xica」だった、と略歴は書く。レーベルの宣伝文である。同じ略歴には、ボンガのこんな言葉も引かれている。
"I began my career as a protest singer."(私は抗議の歌い手として歌い始めた)2
編集盤の中の位置
Appleの表示では2013年9月30日、Lusafricaは『Angola 72』と、パリで録った次作『Angola 74』を2枚に収めた『The Lusafrica Series: Angola 72/74』を出した(レーベルの作品一覧は2012年の再発とする)。この曲は1枚目の4曲目、4分57秒で、単独の『Angola 72』と同じ位置、同じ長さで入っている。23 編集盤は二つの盤を合わせたもので、Appleは同じ長さで、1972年の録音として載せている。
この曲は、1995年にLuaka Bopが出した編集盤『Adventures in Afropea 3: Telling Stories to the Sea』では1曲目に置かれた。3 略歴によれば、のちに歌手ベルナール・ラヴィリエ(Bernard Lavilliers)が、ボンガとの二重唱でフランス語版を歌っている。2
クラブの側から
2022年4月のEARMILKでマルヴィカ・パディン(Malvika Padin)は、シナプソンの版を、ボンガの民謡の気配を帯びた声に二人のディープ・ハウスの音を合わせたオーガニック・ハウスの曲と紹介し、もとはリミックスで、ライブで人気の一曲だったと書いた。4 Appleには、この版の3分3秒のシングルと、同じ年11月の盤『Global Musique, Vol. 2』に入った5分31秒の延長版が並ぶ。3 ロッテルダムで『Angola 72』の中心に置かれた曲は、50年後、ブートレグとして聴き手に広まり、ボンガの支えで正式に世に出た。
出典・注
[1] Aidan Grant, SYNAPSON & Bonga Share Official Version of Mona Ki Ngi Xica, Magnetic Magazine、2022年4月8日。YouTubeでのブートレグからUnity Recordsでの発売へ(記者の地の文)、シナプソンの声明(3,000万回、ボンガへの謝意)。
[2] Bonga, Lusafrica公式(英語の略歴、日付の表示なし。本文に74歳の誕生日を迎えたばかりとあり、2016年頃の文面とみられる)。ページの作品一覧は編集盤を「Angola 72/74 (2012 re-issue)」と表示する。生年と本名、ポルトガルでの陸上とMPLA、ロッテルダムへの亡命、『Angola 72』の録音(カーボベルデの音楽家、Morabeza、現在はLusafricaで入手可)、中心曲としての記述、『Angola 74』をパリで録ったこと、ラヴィリエの二重唱。ボンガの言葉(直接引用はここから)は略歴に引かれたもので、いつどこで話したかは書かれていない。生地は略歴では「Kipiri」、Playing For Changeの記事では「Luanda」と食い違うため、本文では書いていない。
[3] Apple(iTunes Lookup/Search API): The Lusafrica Series : Angola 72/74(2013-09-30、℗ (C) 2013 Lusafrica、20曲、1枚目4曲目 296,960ミリ秒)、Angola 72(4曲目 296,960ミリ秒)、Adventures in Afropea 3: Telling Stories to the Sea(℗ 1995 Luaka Bop、1曲目、296,040ミリ秒。1972年の録音と同じかは確かめていない)、Synapson & Bonga(単曲 182,652ミリ秒・2022-04-08、延長版 331,327ミリ秒・2022-11-18)。
[4] Malvika Padin, Electro duo Synapson and Angolan legend Bonga collab on "Mona Ki Ngi Xica", EARMILK、2022年4月7日。シナプソンの版の紹介(記者の記述)。