バンドのためではなかった一曲
ウェット・レッグ(Wet Leg)の最初のシングルになった「Chaise Longue」について、2022年1月にUproxxに載った取材で、曲ができたころのバンドの様子を聞かれたリアン・ティーズデイル(Rhian Teasdale)は、バンドはもうやっていた、と答えてから続けた。
"We just didn't really write the song for the band."(ただ、この曲はバンドのために書いたわけじゃなかった)1
相方のヘスター・チェンバーズ(Hester Chambers)が補う。ウェット・レッグとして何度かライブをしたあとで、次のウェット・レッグの曲にしようというのでなく、ただ楽しみで書いた。するとウェット・レッグのほうが、よし、それをもらおう、となった。ティーズデイルは、自分たちが引き取ったのだ、と言い添えた。1
泊まりがけの冬
二人はワイト島に暮らし、2 何も出さないうちに、ロックダウンのさなかにDominoと契約していた。1 曲ができたのは2019年のクリスマスの時期だ。2021年11月にThe Currentに載った対話で、聞き手のジル・ライリー(Jill Riley)に、チェンバーズは、泊まりに来たティーズデイルがなかなか帰らず、泊まり始めて5週目に書いたと話している。夜は絵を描いたりテレビを見たりしながら、ふざけた曲を一緒に書いていて、これもその一つだった。真面目でない、ただ面白い曲で、それまでコンピューターに入れてきたどれとも違っていたという。2
Uproxxでチェンバーズが話したところでは、始まりはふざけたジャムで、バンドで鍵盤を弾くジョシュア・オメアド・モバラキ(Joshua Omead Mobaraki)がドラムとシンセのラインとベースを置き、ティーズデイルがその上で即興で詞を付けた。それを練習スタジオへ持ち込んで生のドラムにし、ロンドンでジョン・マクマレン(Jon McMullen)と録音した。構成を詰め、詞を仕上げるうちに、曲はずいぶん変わったという。1 ティーズデイルは、元のデモが7インチ盤のB面で聴ける、とも話している。1
数字と、顔
ライリーはその対話の冒頭で、この曲がThe Currentのチャート番組で何週も1位を続けていると紹介している。2 翌年1月1日、同じサイトのリード・フィッシャー(Reed Fischer)は、ウェット・レッグがその年間カウントダウン「Top 89」で1位になったことに触れ、この曲がSpotifyで700万回近く再生され、少なくとも二つのパロディが作られたと書いた。3 Uproxxのアニー・ザレスキ(Annie Zaleski)は同じ1月、前の年にこれほどファンと評者の両方に届いたシングルは少ないとし、話し声に近い歌、ぎざぎざのギター、前へ押すリズムを持つ3分ほどのポストパンクで、ばらばらの楽器のパートと歌の旋律とシンコペーションの部分を縫い合わせた編曲は見事なパズルのようだ、と評した。1
ただ、曲が届いたと実感したのは数字からではなかった、とチェンバーズは言う。ライブを始めて、客が歌を歌い返してくるのを見たときだった。Spotifyの数は見られても、その数字には顔がない。1 パリでの公演では、ティーズデイルがフランス語で歌ってみたところ、客が英語の元の詞を大声で返してきたので、英語に戻したという。1 ティーズデイルは、この曲をライブでやるたびに自分たちを少しも真面目に扱えなくなる、それは悪いことではない、と話している。1
出典・注
[1] Annie Zaleski, Wet Leg Tells Us How A Viral Hit Can Still Launch A Career, Uproxx、2022年1月28日。Zoomでの対話。取材日は記載なし。評者の地の文はL47–56(評はL47–53)。対話の問答は、バンドのためではなかった(L59、直接引用)・楽しみで書いたこと(L61)・受け入れた(L65–67)、作り方(L94–95)、デモとB面(L97)、実感の時期(L123–127)、パリ(L130–132)、Dominoとの契約(L138)、ライブでの演奏(L172)。
[2] Jill Riley, Interview: Wet Leg's Rhian Teasdale and Hester Chambers just want to have fun, The Current、2021年11月2日掲載。取材日は記載なし。チャート番組での1位とワイト島は聞き手ライリーの言葉(L10)。曲を書いた時期と経緯はチェンバーズの答え(L29)。
[3] Reed Fischer, The "Chaise Longue" effect: Inside Wet Leg's surprise hit, The Current、2022年1月1日。再生数・Top 89の1位・パロディはL11–20(記者の記述。2026-09-30 06:03の再取得時の行番号)。