セットを開ける曲から、締める曲へ
サンフランシスコのフェスティバル、ポルトラでの出番の直後にバリー・キャント・スウィム(Barry Can't Swim)に聞いた短い問答が、2023年10月25日にThe Luna Collectiveに載った。いまライブでいちばん好きな曲を聞かれて、彼は駄洒落から答えている。
"'Sunsleeper' is the sleeper hit, pun intended."(「Sunsleeper」はスリーパー・ヒット、じわじわ効いてきたヒットだ。駄洒落のつもりでね)1
誰もが聴きたがり、いつも客を沸かせる曲だという。フェスにうってつけの楽しい曲で、これでセットを勢いよく開ける、と続けた。1 記事は彼をDJとして紹介している。本人は、会場の倉庫が満員で、外に長い列までできていたと振り返った。1
出た盤と、声のサンプル
曲はその年の2月21日にNinja Tuneから出た。Qobuzの4曲入りの掲載では1曲目で、長さは3分42秒。名義欄には、ジョシュア・マイニー(Joshua Mainnie)とともに、プロデューサーとミックスにオリ・ベイストン(Oli Bayston)、マスタリングにマット・コルトン(Matt Colton)が並ぶ。作詞作曲の欄にはXosé Lois RomeroとAlejandro Guillánの名もあるが、どの部分を書いたのかは掲載からは分からない。2 Bandcampに載る発売時の紹介文は、これをNinja Tuneからの最初の発表とし、前の単曲「Like The Old Days」に続くものと紹介する。3 Appleのデータでは、同じ長さの曲が同年10月の『When Will We Land?』の5曲目にも入っている。4
同じ紹介文で本人は、こういう曲を書くのは久しぶりで、純粋なパーティーのエネルギーだと言い、作風は「Blackpool Boulevard」の従兄弟のようなもので、スペイン語の声のサンプルを重ねてさらに温かさと勢いを足した、と説明している。3 宣伝のための文面である。2023年6月2日のNotionで、リアム・カターモール(Liam Cattermole)は、紹介文と重なる言い方で同じ声のサンプルと「Blackpool Boulevard」との近さに触れ、この曲がその年に入ってからクラブの現場で効いていると書いた。5
苗場の最後の曲
2025年7月26日、フジロックのホワイト・ステージで、彼はバンドでのライブを見せた。FUJIROCK EXPRESSのレポートを書いた阿部仁知は、世界初披露のバンドセットと伝え、最後の曲が「Sunsleeper」だったと記す。客の中にはリフトを始める人もちらほら現れ、ステージ上の本人も奔放に踊っていたという。6 BEATINKのレポートで風間一慶は、フジロックに向けて組んだライブセットのお披露目だとしつつ、ライブセット自体は本国イギリスをはじめ数回披露してきたとも書いており、阿部とは書き方が分かれる。ストリングスもコーラスも加わらない構成は珍しいという。風間も、代名詞のような曲として「Sunsleeper」が最後に落とされたと書いた。7
ここからは書き手の読みだが、2023年にセットを開ける曲だと話したこの曲は、2年後のバンドでのセットでは締めに置かれた。始まりに客を掴む役と、最後に客を踊り尽くさせる役の両方を、同じ曲が担っている。風間によれば、苗場ではその最後の曲の中で、彼自身がピアノのソロを軽やかに弾いた。7
出典・注
[1] Sophie Gragg, Q&A: Barry Can't Swim Rides High at Portola, The Luna Collective、2023年10月25日(頁の表示はOct 25、年はページのメタデータによる)。題L34、前書きL42–43(DJという呼び方は筆者のもの)、会場とサンフランシスコL50(本人の答え)、曲の答えL62(直接引用はその一文目)。ポルトラの開催日は記事に書かれていない。
[2] Sunsleeper by Barry Can't Swim, Qobuz(米国)。Released on 2/21/23 by Ninja Tune(L287–288)、1曲目00:03:42と名義欄L325–330。この4曲入りの掲載には「God Is The Space Between Us」「Sonder」「Like The Old Days」も並ぶ。
[3] Sunsleeper, Barry Can't Swim(Bandcamp、本人頁)。紹介文L166–169は発売時の宣伝文の転載(本人の言葉はL166)、本名L168、released February 21, 2023(L171)。この頁の曲目は3曲で、1曲目は03:40と表示(L153–163)。推薦欄(L209以降)は他の盤の推薦で、この曲の使われ方の根拠にはしていない。
[4] iTunes Lookup: When Will We Land?, Apple(米国)。アルバムの日付欄2023-10-20、5/11曲「Sunsleeper」222,183ミリ秒(曲の日付欄2023-02-21)。単曲盤『Sunsleeper - Single』も222,183ミリ秒(iTunes Search)。同じ録音かどうかは確かめていない。
[5] Liam Cattermole, Barry Can't Swim is Ready for a Stratospheric Summer, Notion、2023年6月2日(2024年5月3日の日付も併記)。L64の記者の地の文のみ使用。L62–64は紹介文([3] L166)と言い回しが重なり、独立の確認には数えない。L60の「later this year」から、2023年6月2日掲載時点の記述として扱った。
[6] 阿部仁知, BARRY CAN'T SWIM, FUJIROCK EXPRESS '25、2025年7月26日。見出しと冒頭L62–63、最後の曲と客席L73。
[7] 風間一慶, Barry Can't Swim / UKダンスの今を運ぶ者、バリー・キャント・スウィム 苗場で響かせた熱狂の祝祭! フジロックライブレポートが到着!, BEATINK、2025年7月30日。ライブセットの経緯L47–48、最後の曲とピアノL51。