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2023年5月24日 追加

Why Did You Do It - Remastered

Stretch / Elastique (Remastered) ▶ Spotify

エッセイ ・ 約 3 分

現れなかったドラマーに向けた一曲

1974年1月22日、米ペンシルベニア州ヨークの大学。フリートウッド・マック(Fleetwood Mac)の名で組まれた一行が、ドラマーのミック・フリートウッド(Mick Fleetwood)を待っていた。歌い手はエルマー・ガントリー(Elmer Gantry)、ギターはカービー・グレゴリー(Kirby Gregory)。フリートウッドは来ず、代役のドラマーで幕が開いた。ニューヨークでもやはり来ないと告げられ、マネージャーのクリフォード・デイヴィス(Clifford Davis)は自らマイクを取って客に宣言したという。

"I am Fleetwood Mac!"(私がフリートウッド・マックだ)1

この編成はアメリカで15回ほど公演して終わった。二人は前年11月にデイヴィスとフリートウッドから誘われ、フリートウッドと自宅で話し合ったと言う。フリートウッドの側は後に、加わるかどうかは決めていなかったと証言した、と記事は両方を書いている。1

怒りを曲にする

新聞に偽者と書かれたことを、ガントリーはこう振り返る。

"I felt a rage towards him that has taken decades to subside – even slightly."(彼への怒りは、ほんの少し収まるまでに何十年もかかった)1

1975年、二人はストレッチ(Stretch)を組み、この曲を録った。音楽誌Classic Rockのキャンベル・ディヴァイン(Campbell Devine)の記事は、曲がフリートウッドに向けられたものだと書く。グレゴリーによれば、歌詞の一節は、トゥーティングの部屋で三人が新しいフリートウッド・マックについて話し合ったことを指している。1

制作はマーティン・ラッシェント(Martin Rushent)。ガントリーの記憶では、録音はラッシェントの家の下のガレージで、中古の8トラックの機材はどれもくたびれていたが、ラッシェントは素晴らしい音を引き出した。1

16位と、放送されなかった映像

曲は英国のシングル・チャートで16位まで上がり、ラッシェントにとって初めてのトップ20になった。バンドは、ブルース・ガワーズ(Bruce Gowers)がクイーンの「Bohemian Rhapsody」を撮ったのと同じ月に、彼と宣伝用の映像も作った。だが仕上がったのはシングルがピークを過ぎた後で、映像は一度も放送されなかった。1

別の場所で鳴る

曲はその後、1998年の映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』に使われ、英国と欧州でIsland Recordsから出たサウンドトラック盤にも18曲目に入った。12 翌1999年には、イタリアのDJジジ・ダゴスティーノ(Gigi D'Agostino)の「Bla Bla Bla」が出る。Discogsのその盤の項目の注記によれば、声はこの曲からのサンプルだ。3 1975年のロックの歌声が、DJの曲の声になった。

この版は、アルバム『Elastique』の録音を2012年にRepertoire Recordsが再マスターしたもので、3分32秒。45 2011年に再結成したバンドがアルバム『Unfinished Business』で録り直した版とは別の録音だ。16

ヨークの夜から39年後、ガントリーはロンドンのリハーサル室で、ようやくその一件を話す気になった。ひ孫たちが古いでたらめを読まずに済むように、話を正す時が来たのだ、と。1

出典・注

[1] Campbell Devine, "I felt a rage towards him that has taken decades to subside": The mysterious case of the fake Fleetwood Mac, Louder(Classic Rock)、2023年12月6日。初出はClassic Rock 168号(2012年3月)で、ウェブ版はその再掲。ヨークでの待機、デイヴィスの宣言、約15公演、誘いの経緯とフリートウッドの証言、ガントリーの怒りの言葉、1975年の結成と曲の標的、グレゴリーの説明、ガレージのスタジオ、16位とラッシェント初のトップ20、映像、映画での使用、2011年の録り直し、「39年後」の語りに使った。グレゴリーの説明には歌詞の一行がそのまま引かれているが、ここでは引かず、何を指したかだけを書いた。フリートウッドの側の言い分は、記事に引かれた証言の範囲でしか読めていない。

[2] Discogs, Lock, Stock & Two Smoking Barrels (Soundtrack From The Motion Picture), 盤の項目(APIのrelease 382588、英国・欧州のCD、Island Records CID 8077、1998年8月31日)。18曲目「Why Did You Do It」(Stretch、3:29)に使った。映画とこの盤で使われたのがシングルの版かアルバムの版かは確かめていない。

[3] Discogs, Gigi D'Agostino – Bla Bla Bla, 盤の項目(APIのrelease 220115、イタリアのCDシングル、BXR 1062/CD、1999年)。項目の注記に、1曲目「Abbentenza Mix」と2曲目「Abbentenza In FM Mix」の声はStretchの「Why Did You Do It?」からのサンプルとある。注記はDiscogsの投稿者が書いたもので、盤面のクレジットの転記ではない。発売の年は、同じ曲のドイツ盤(release 4788360、ZYX 9030-8、1999年5月17日)の表示とも合う。

[4] iTunes Lookup: Elastique (Remastered), Apple(日本)のAPIの登録値。2曲目「Why Did You Do It (Remastered)」211,907ミリ秒、℗ 2012 Repertoire Recordsに使った(日付欄は1975-01-01)。Deezer(Why Did You Do It (Remastered)、APIの値)ではアルバムの2曲目、211秒、発売日2012年5月28日。

[5] Discogs, Stretch – Elastique, マスターの項目(APIのmaster 118981)。元のアルバムが1975年に出たこと、A面2曲目「Why Did You Do It?」3:28に使った。再マスター版(3分32秒)との数秒の差が何によるのかは分からない。シングルの録音とアルバムの録音が同じテイクかどうかも確かめていない。

[6] Discogs, Stretch – Unfinished Business, 盤の項目(APIのrelease 7515860、Repertoire Records、2011年)。2曲目に「Why Did You Do It」が入ることに使った。

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