盤を明るく閉じる曲を、さらに晴れた方へ
ラヴテンポ(lovetempo)の曲は、ツアーの合間に生まれた。ポールサイド(Poolside)の一員として回っていたマティ・セイファー(Mattie Safer)は、ホテルの部屋とツアーバスで曲を作っていた。時間が余り、少し前の失恋から気をそらすために、グルーヴのある音楽を作りたかったのだという。
"I feel like a lot of the best dance tracks are born from pain."(いいダンス・トラックの多くは痛みから生まれる気がする)1
2023年4月28日、EP『lovetempo』が出た日に、音楽ブログBan Ban Ton Tonに載った取材での言葉だ。1
ニューヨークのバンドから、ソロへ
セイファーは、ニューヨークのダンス・パンク、ザ・ラプチャー(The Rapture)でベースを弾き、歌っていた人だ。DFAの周りでパーティーを開き、夜更かしして夢を語る日々だったと本人は振り返る。10年いたバンドを離れ、2018年からはポールサイドのライブで歌とベースを受け持っている。12 ポールサイドの曲は「Why You Wanna」のエッセイにもある。
EPでは、彼がベースと歌、ドラムのプログラミング、シンセのほとんどを受け持ち、ポールサイドの仕事で知り合ったグラント・ズブリツキー(Grant Zubritsky)が全曲で制作を手伝った。1
「The Sun」とユクセック
EPの話の最後に、セイファーは「The Sun」についてこう話している。ふと頭から離れなくなった、ただのハッピーなベースラインだった。レコードをもう少し明るく閉じる曲がほしかった。1 12インチでは原曲がB面の1曲目、ユクセック(Yuksek)によるリミックスがその次、B面の最後に入っている。2
リミックスを頼んだのはレーベルのRazor-N-Tapeで、セイファーはそれを「true joy」(本当にうれしかった)と言い、ユクセックの音楽が大好きだと続ける。EP全体の気分は、楽しい時を過ごして、踊って痛みを追い払うことだ、とも。1 レーベルの紹介文は、レーベルの常連のユクセックが、EPでいちばん高揚する曲を、両手を上げて喜ぶような所まで連れていった、と書く。2
原曲は4分55秒、リミックスは5分22秒。Beatportの表示では、リミックスは116 BPM、Dメジャー、ジャンルはNu Disco / Disco。23
春と夏のチャート
発売から1週間後の2023年5月5日、ジェイクリヴ(JKriv)がBeatportに載せた10曲のチャート「Spring Grooves」に、この曲が入った。セイファーの取材によれば、ジェイクリヴはEPを聴いて熱心に乗ってくれた一人で、そこからRazor-N-Tapeとの話が転がり始めた。41 6月27日には、ミゲル・レチー(Miguel Rechy)の9曲のチャート「LA GROOVE」にも入り、同じ一覧にはユクセックの別のリミックス「Disco Numberwang」も並ぶ。5
失恋から気をそらそうとホテルの部屋で始めた計画の、盤を明るく閉じるはずの曲は、その春と夏、DJが選ぶ踊るための一覧に二度並んだ。
出典・注
[1] The Insider, Interview / Mattie Safer / lovetempo / Razor N Tape, Ban Ban Ton Ton、2023年4月28日。ツアー中の曲作りと失恋、引用、ザ・ラプチャーとDFAの頃、ポールサイドへの参加(2018年)、EPの演奏と制作の分担、「The Sun」とリミックスについての言葉、ジェイクリヴとレーベルとの縁に使った。取材者は筆名。「踊って痛みを追い払う」はEP全体の気分についての言い方で、リミックスだけの話ではない。取材では「The Sun」に二人の友人が声を足したとも語るが、ここでは名を出さない。
[2] Razor-N-Tape, lovetempo, lovetempoのBandcamp、2023年4月28日。12インチの曲目(B1「The Sun」、B2「The Sun (Yuksek Remix)」)、長さ(04:55、05:22)、紹介文に使った。紹介文はレーベルの宣伝文で、ザ・ラプチャーとポールサイドでの経歴にも触れる。デジタル版には別の曲のリミックスがもう1曲入る。
[3] Beatport, The Sun - Yuksek Remix, 曲のページの表示。BPM・キー・ジャンル・長さ(5:22)と、このリミックスが入ったチャートの一覧(「Appears On」)に使った。
[4] JKriv, Spring Grooves, Beatport、2023年5月5日。10曲の一覧にこのリミックスが入ることに使った。Beatportの店の中でDJが作る推薦の一覧で、実際にどこでかけたかの報告ではない。ジェイクリヴとレーベルの関係(取材では、EPを聴いて熱心だった一人として名が出るだけ)は確かめていない。
[5] Miguel Rechy, LA GROOVE, Beatport、2023年6月27日。9曲の一覧にこのリミックスと「Disco Numberwang - Yuksek Remix」が入ることに使った。[4]と同じく推薦の一覧。