ビデオ通話の診察を、踊れる曲にした
マインドチャッター(Mindchatter)は、ニューヨーク郊外を拠点にする、楽器を幾つもこなすエレクトロニックのプロデューサーだ。「Brain Pills」の元になったのは、アプリのビデオ通話で精神科医の診察を受け、ADHDの薬を処方された本人の経験だった。その体験を、彼はまず一言で片づけている。1
"The whole process is extremely goofy."(あの過程はまるごと、ものすごく間抜けだった)1
そのうえで、たくさんの人がこの曲に共感しているところを見ると、これが新しい当たり前になったらしい、と続けた。1
笑いと、踊れる作り
曲は2024年1月に単曲として出て、2月2日、Foreign Family Collectiveから出たEP『This Is A Reminder That You Are Not Behind Your Face』の3曲目に入った。EPの幕を開けるのは「Dopamine Detox」だ。23 EDM Identityのブルック・ネルソン(Brooke Nelson)はEPの評で、この曲を、ばかばかしいのに身に覚えがあって歯切れのいい曲と呼び、いまの現実のおかしさが織り込まれていると読んだ。4 彼はそれまでに、Coachella、Lightning in a Bottle、Okeechobeeといったフェスに出て、ポロ&パン(Polo & Pan)やSGルイス(SG Lewis)のツアーにも加わっていた、とネルソンは紹介している。4
4月には、ブログOne Track At A Timeのジェイコブ・ブレイブルック(Jacob Braybrooke)が取り上げた。彼はこの曲を、ラジオ局KCRWの番組「Today's Top Tune」で知ったという。1 ふわふわと泡立つような打楽器で始まり、重めのドラムと霞んだサイケデリックなシンセが加わって和音を進め、声にはリバーブがかかる、と彼は曲の運びを追う。風刺と皮肉をダンス曲の作りそのものに織り込んだところが好きだ、とも書いた。1 Beatportの表示では126 BPM、Bマイナーで、ジャンルの欄はElectronica。5
間抜けだったと本人が笑う一回の診察は、ラジオで流れ、それを聴いた一人の書き手が、その日の一曲に選ぶところまで届いた。
出典・注
[1] Jacob Braybrooke, Today's Track: Mindchatter – 'Brain Pills', One Track At A Time、2024年4月23日。本人の紹介、曲の元になった経験と本人の言葉、KCRWで知ったこと、曲の運びの描写と評に使った。本人の言葉はブレイブルックが「プレスリリースで」と断って引いたもので、取材で聞いた言葉ではなく、宣伝文の中の談話。KCRWの番組ページは読めておらず、放送の日付は確かめていない。
[2] Deezer, Brain Pills, 曲の登録(公開API)。単曲の日付(2024年1月11日)に使った。ISRCはEPの版と同じで、同じ録音の先行配信と見ている。長さ3分10秒。
[3] Mindchatter, This Is A Reminder That You Are Not Behind Your Face, Bandcamp(本人頁)。EPの発売日(2024年2月2日)、曲順(1曲目「Dopamine Detox」、3曲目「Brain Pills」、03:10)、Foreign Familyの表示に使った。
[4] Brooke Nelson, Mindchatter Sheds Light on Modern Reality With His Latest EP, EDM Identity、2024年2月2日。曲の評とフェス・ツアーの経歴に使った。「ばかばかしいのに身に覚えがある(silly yet relatable)」は[1]も同じ言い回しで書いており、発表資料の言葉を二人が拾った可能性があるので、二つの独立した評には数えない。
[5] Beatport, Brain Pills (Original Mix), 曲のページの表示。BPM・キー・ジャンルに使った。長さ3:10、発売2/2/24。ジャンルの付け方はサービスで分かれ、Appleはエレクトロニック、Deezerの登録はElectro、[1]は「Electro-Pop」と書く。